唐突ですがAIが進化すると淘汰されてしまう仕事があるといいます。
一般事務員
・銀行員
・警備員
・建設作業員
・スーパーコンビニ店員
・タクシー運転手
・電車運転士
・ライター
・集金人
・ホテル客室係
・ホテルのフロントマン
・工場勤務者
・薬剤師
等々
リストに鍛冶屋さんは入っていないのですが現実に鍛冶屋さんはどんどん閉業しています。
車をちょいと走らせて鍛冶屋に出向いて
「こんな包丁作ってよ」
「はいよ!三日後にできるよ」
なんて気軽な世界線は疾(と)うの昔に消滅してしまいました。
参考フィリピン農園便り:100円でレンチをナイフに作り変えてくれる鍛冶屋さん
複合材の進化発達によって包丁なんかの調理刃物は工場生産品でかなりカバーできていますし需要が多いのでまだまだ包丁鍛冶さんがいると思いますが職人さんが使うニッチな特殊刃物はそもそも需要が少ないですし消費サイクルも長いので儲かるわけがない。
※包丁鍛冶も小刀は作れますが面倒なのでやりたがらないノダ。
こんなに儲からない仕事を次世代(息子さん等)に引き継ぐだなんて酷な話なのです。
でも、これって使う側には大問題。
という事でイザという時のために小刀くらいは自作できるように準備しておくべき時代の到来という訳なのです。
と言っても小刀や小鉋を自作している職人さんは結構いらっしゃって自動カンナの替え刃や鋸刃を成形して小刀にしたりしているようですし、ヤスリを熱処理して切り出し小刀やナイフに改造する動画は沢山アップされていますので皆さんも観たことがあると思います。
自宅に炉を構えて自家鍛接するとなるとややハードルが高いですが、ほぼグラインダーだけでの成形でしたら飛び散る火の粉に気をつける、手を巻き込まれないよう気をつける、保護メガネをする等注意をすれば割と手軽に切れる小刀ができるのでは。。。ないのか?ということで実際にやってみました。
以前にもハイス鋼でナイフを作ってまずまずの成果を感じる事ができましたので今回もハイス鋼で繰小刀の両刃を作ってみたいと思います。
なぜ古いヤスリなどではなくハイスなのか?とハイスナイフ製作についての注意点は
こちらをご覧下さい。
なぜ両刃の繰小刀なのか?
市販の両刃繰小刀が入手困難で特注も難しいからです。
両刃の繰小刀を自作してる人はあまり見かけないですしね。
今回は厚みのあるHSSツールビット 5mmx18mmx200mmを使います。
例によって職場の昼休みを利用してグラインダーで成形します。
と言って、焼入れ工程等も無いので特筆する事も無いのですな。
本当は治具を製作してきっちり角度を出した方が良いのですが会社のグラインダーという事で無理でしたのでアイデアを載せておきます。
フリーハンドで機械研ぎはかなり難しい
ある程度成形したらダイヤ砥石で仕上げていくのですが、これがまた硬くてなかなか進まないのです。
興味を示してきた同僚をおだてて研いでもらったりしました
同僚が研いでみたいというからやってもらったけど、上手いじゃないの!!#初めての研ぎ #小刀研ぎ #ダイヤ砥石 pic.twitter.com/R68XKdJ5pd
— kurikogatana (@kurikogatana) April 26, 2024
凹みを直すにも限界を感じてこれくらいにしました
あとは砥石で仕上げていくのですがシャプトンとかなにわ砥石の颯(はやて)等硬めの砥石を使いました。ダイヤの#3000〜#6000を持っていると楽だと思いますがワタクシの現状では他に使い途がないので購入を躊躇しています。
最終仕上げは軟らかい砥石で研いでみました。ハイス鋼、ダイヤ砥石以外だとコツが必要です
指掛かり仕様の柄に仕込んで完成
包丁や小刀は指掛かりが無いモノが多いですが、これって厨房や工房で揉め事が起きた時に殺傷能力を下げるため意図的に無くしているって聞いた事があるのですが本当かな?
単に材料の歩留まりの関係もあると思うのですが、どちらにせよワタクシは独り作業なので問題無し。
仕様・ハイス全鋼グラインダー削り出し
価格・2000円
鋼材・ハイス鋼
全長・275ミリ
刃長(刃渡り)・125ミリ
巾 ・15ミリ
厚み・2.6-3.6ミリ
刃角度・28度
重量・103g
使い心地はなかなか良い
肝心の切れ味はどうか?
良く切れます
両刃の場合片刃よりも少し起こして使わないと切れないのですが直ぐに慣れるはず。
紙なんて殆ど切れませんが硬めの木材に対峙すると突然覚醒したように切れるからハイス鋼は不思議(単に研ぎが下手なだけだろうって話もあります)
間違いなく硬木を使う製作者の方の強い味方になってくれるでしょう。
初めて自作した繰小刀がこれだけ切れるのなら将来鍛冶屋謹製の繰小刀が無くなったとしても、なんとかかんとかやれそうな気になってしまった貴重な体験が積めました。
またいつか作ろうっと