ふじ近(ふじちか、ふじきん、ふじこん、いずれかは不明)の繰小刀です。
その特徴から坂光こと坂井久二さんの製作ではないかと噂されている問屋銘です。
ふじ近自体絶対数が少なく、あまりオークションにも出てこないので私的にはミステリアスな銘になっています。
ふじ近の「ふじ」は富士なのか藤なのか?
藤ならば山形の藤沢刃物店の一心堂義近から命名した藤近という可能性も無くはないと思ったりもしたのですが鍛接線の特徴が全く違うので可能性は低いかな、と思います。
仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・2000円(オークション価格)
鋼材・不明
全長・273ミリ
刃長(刃渡り)・
巾 ・20ミリ
厚み・2.7-3.0ミリ
刃角度・32度
重量・90g
坂光初期モノと酷似している、鋼が薄くやや細身で刃角度が30度以上あるタイプ。
サビが酷いので何時ものように綺麗にしていきましょう。
手順は毎回変わりません
鞘から刃を抜く→
歪みを取る→
黒く染める→
研ぐ→
鞘を綺麗にする→
鞘を塗装する
で完成になります。※動画は以前坂光をメンテナンスした時のもの
今回は古くて錆が深かったせいか穿孔錆がかなりあって荒砥石で追い込んでみたのですがある程度で止めました。
鋼が薄いのであまり追い込むと致命傷になりかねませんから。
表の黒染めはガンブルー液ではなくイチネンケミカルズの黒染めスプレーを使ってみました。
ガンブルー液の安定性を欠く感じが気に入らなくてマッドブラック塗装にしたのですが使いやすくて良いですね。
食物を切る包丁やナイフにはオススメしませんが木工だと色移りもなく錆止め効果が高いです。
研ぎについてですが古い坂光系は鋼が異常に硬いモノがありまして今回のふじ近も硬かったです。かなり研ぎに苦労するかもしれません。
当時の焼戻しの関係なのか、時効硬化なのかは確かめようがありませんが不思議な事にSHAPTON等のセラミック砥石では刃が出にくく昔ながらの焼成砥石のほうが良く刃が出る傾向があります。
自ずとキング砥石やベスターの設定になります。
少しでも気を緩めると刃先に(勝手に)小刃が出てしまうのでほんの少しだけ(0.02ミリとか)峰側を浮かせて刃先に効くように心掛けます。
鞘柄についてですが今回はペーパー掛けをしてサンディングシーラーを刷毛塗りしました。
所々に歴戦の穴や傷があったのですがこれらを消すまでペーパーを掛け
ると柄が細くなって持った時の感覚が大きく変わってしまいます。現状でかなり細い柄なのでこれ以上は使いにくくなってしまうと判断して、レリック加工とします。
サンドペーパーを半分掛けたところ
綺麗になりました
塗装後完成
自分にとっては使いやすい小刀が第一なので深い黒錆や傷だらけの柄は気にならないのですが使い始めに完全態を求める方にとってはモヤモヤするでしょうね。