共柄の繰小刀「兼進」です。
共柄繰小刀は鑑賞用的な持ち手の分厚いタイプはけっこう見るのですが持ち手部分まで均等な厚みを維持している実践タイプはあまり見かけなくて私的には使い勝手が良いと思うのですが滅多に出てこないのでレアな位置付けと考えています。
鞘が邪魔にならないので平に削るのにとても便利なんです。
初めて手にしたのは大納言>でその後は政吉を入手した程度でした。
藤廣の墨流しなんかも買えますが鑑賞用っぽいのは苦手意識があって買わずじまいで現在に至っています。
今回の兼進(カネシン)ですが岐阜県関市の盆栽刃物専門兼進刃物製作所製と見て間違いないでしょう。
ホームページのラインナップに今回の小刀は掲載されていませんが銘の登録商標を確認できましたので間違いないです。
しかし、盆栽刃物専門という事でそもそも繰小刀としてではなく盆栽用細工切り出し刀として作られたのかもしれないですね。
また、三木か三条の鍛冶屋さんのOEMという可能性もあるのですが細部を観察した印象では兼進刃物製作所のオリジナルだと思いました。
仕様・利器材火造り鍛造か
価格・2000円(オークション)
鋼材・おそらく青紙
全長・225ミリ
刃長(刃渡り)・100ミリ
巾 ・21ミリ
厚み・1.8-3.4ミリ
刃角度・25度
重量・77g
刃角度25度は繰小刀では珍しく鋭角な部類で初期段階の機械研ぎでは小刃が施されています
表面に塗布されたニスのせいかイマイチ切れないので軽く研いでみます。
小刃は鈍角にする意図があるのか、それとも機械研ぎで最速の刃付をしただけなのか、はたまた運送時の刃欠け防止のためなのか、探りながら研ぎますか
繰小刀の研ぎは難しいです。
歪んだ刃を真っ直ぐにするのが非常に困難で、叩いたりコジ棒で頑張ってみるのですが完全な真っ直ぐにするにはかなりの修練が必要でワタクシはその境地に達していません。
直したところでわずかに歪んでしまっているというレベルが精一杯です。
叩き過ぎて鋼が硬化しても面白くないですから、最初の頃はある程度で止めて歪みに合わせて研ぐ事になるのですがこれがなかなかに難しいのです。
表が歪んでいると裏もつられて瓢箪裏になりやすいですし、いや、当サイトでは瓢箪裏でも切れ味は保てると何度も書いてきているのですが、それでも下ろしたての小刀が瓢箪裏になってしまうと軽いショックを受けてしまうのでした。
今回の兼進さんはなんと最初からチョッピリ瓢箪裏になってます!これは…気にせず研げるぞ!自責で瓢箪裏になったのではないという免罪符が気持ちを楽にしてくれます。
幸い初期段階ではわずかな歪みで済んでおり、数回コジ棒を使った程度で砥石工程に進めました。
今回は大納言の繰小刀も一緒に研いでいたのですがこの大納言が超曲者でして何をしても、手持ちの砥石を全て使っても刃先が研ぎきれないのです。
この大納言の事を坂井久二さんの製作であると紹介していましたが違うような気がしてきましたこの小刀に苦戦した時と同じ現象なのです。
2週間くらい毎日試行錯誤して結果が出ずウンザリしてしまいました。
その流れで今回の兼進を研いだので同じような苦労をするのかな?なんて思ってしまっていたのですが、なんとものの10分で凄く切れるようになりました。
刃角度25度のおかげもあるのかもしれませんがとにかく簡単に刃が付いてしまって仕上げ研ぎの前に作業に使える状態になりました。
刃先に光を当てても白く光りません。刃先が研げています
一方大納言は研ぎきれていない証の白い筋が見えています
地金も研ぎ難くて硬いのか兼進だと曇る砥石でも曇る事はなくピカピカになっていくだけ。細かい傷がついていないのだと思います。
荒砥→1000番までは刃先が研げているのですが3000番から上になると急に研げなくなります。
研げなくなるというのが適切な言葉ではないのかもしれませんが他の小刀でこのような現象は起こりませんので言葉が思いつきません。
仕方がないので刃先を当てるようにほんのわずかに起こして研いでみるのですが元々刃角度が35度もありますので当然切れが重くなります。
悩ませる小刀・大納言。。。
あぁ兼進の紹介なのにボヤいてしまいました申し訳ありません。
兼進の登場で大納言がお蔵入りになりそうですがこれもまた節理という事か。