出雲小刀製作所の小刀は最近一番のお気に入りで側に置いて気がつけば手にしています。
勿論誰が手にしても同じ感想になるとは思っていません。
私の手の大きさや切癖、力加減にマッチしているのでしょう。
こういう小刀は何本あっても無駄にならないのでオークションで出たならばなるべく落札したいのですがなかなか出品されません。
出雲小刀製作所がそもそもかなり前に廃業していますので絶対数が少ないのか手放す事なく使い続けられているのか分かりませんが私の中では幻級の小刀になっています。
ある日オークションサーフをしていましたら目に止まる小刀がありまして見覚えのある「本職用」という刻印のある小刀が出品されているではないですか!「用」の左部分が欠けた感じが出雲小刀に酷似しています。
出品写真のピントがボヤけていてハッキリはわからないのですがわずかに鍛接線も見て取れて心躍りました。
数年ぶりの出雲小刀です。
黒打ちではなくて槌目仕様なのも嬉しいポイントです。
荷物が届くのが待ち遠しかったです。
数日して荷物が届き開封して喜びながら割り箸などを切っていましたが僅かな違和感を感じました。
出品写真では良く見えなかった鍛接線が、、、、実物でもハッキリ見えない。あるにはあるのですが見えにくい状態です。
光に当てたり角度を変えたりしてよーく見ると、有り得ない光景が浮かび上がってきました「あっ!ええ???」思わず声をだしてしまいました。
西口小刀の鍛接線に似ている
冷静になって表を見ると槌目も西口さんの槌目っぽい
いや、嬉しいんです。西口さんの小刀も入手困難ですから。
でも、今回は出雲小刀が欲しかった。
本職用という刻印にばかり目をやってしまい判断を誤ったのでしょうか。
とりあえず一度落ち着いて計測してみます(青字は真中の出雲小刀)(赤字は写真右側の西口小刀)
仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・2800円
鋼材・不明
全長・252ミリ(252ミリ)(252ミリ)
刃長(刃渡り)・60ミリ(64ミリ)(62ミリ)
巾 ・22.5ミリ(22ミリ)(23ミリ)
厚み・3.2-3.8ミリ(3.2-3.8ミリ)(3.2-3.8ミリ)
刃角度・23度(24度)(26度)
重量・125g(鞘アリ)87g(鞘ナシ)102g(鞘アリ)73g(鞘ナシ)115g(鞘アリ)85g(鞘ナシ)
肝心の切れ味ですが機械研ぎのままでもそこそこ切れますね(今回は研ぎません)。
改めて西口小刀と比較してみると微妙に峰の部分の指当たりが違う。
西口小刀は親指の腹に喰い込む感じが柔らかく、痛み少なく押し切りできます。
ほんの僅かにR加工されているんですね。
小刀を知り尽くした西口さんならではと言えましょうか。
人差し指の当たりも違う。
菊刃紋は西口小刀に比べると少し痛く、どちらかと言うなら出雲小刀に感触が似ています。
これはやはり出雲小刀製作所の小刀という結論に逆戻りです、勉強不足で右往左往してしまいました。
鍛接線が同じだからといって100%西口さんの小刀だとは断言はできないという良い例です勉強になりました。
西口小刀も出雲小刀製作所も当時は三木小刀組合に属していたので情報交換があったのでしょう。
もしかして問屋さんの要望で模倣したのかもしれません。
例えばそれまで西口さんに注文していて何らかの事情で入手できなくなった問屋さんが違和感なく販売したいから模倣をお願いしたとかね。
菊刃紋について検索するも包丁はいくつか出てきましたが、菊と付く刃物屋さんは割と多く限定はできませんでした。
商標登録にも検索結果はありませんでした。
銅を巻いた鞘は蝋引きしてあり東大吉さんの繰り小刀や鹿印の刃物ではお馴染みですが鞘の割れを防ぐ気遣いが感じられて有り難いですね。同じ鞘工房で製作されたものでしょうか。
西口さんの小刀は某切り出し掲示板では
・機械研ぎだけで切れる
・刃が欠けていても切れる
・とんでもない耐久性
・西口小刀はオーパーツ
など、まことしやかな情報が飛び交っていますが、けして嘘とは言えないところに西口小刀の凄さがあります。
でも出雲小刀製作所の小刀も負けず劣らず良く切れる小刀です。
結論:菊刃紋の横手小刀は西口小刀の特徴を持つ出雲小刀製作所謹製である(Xで先行して西口小刀とポストしてしまいました御免なさい)