四郎國光接ぎ木小刀・刀匠の作った小刀って本当なのかい?

デットストックモノの小刀を常に探していますがフリマサイトもオークションサイトも出尽くした感があります。
ただ、秘蔵のコレクションのような一本7万円とかいう高価な小刀はまだまだ出てきます。
そういう小刀はマニアの方にお任せするとして、私のような隙あらば硬い木材を切りまくってやれ、というタイプには厳しい現状です(高価な小刀でザクザク切る方も当然いるのでしょうが私は及び腰になってしまいます)。
しかし、懲りない私は安価なデッドストック小刀を探すべく日々のサイト巡回を怠らないのでした。
ある日フリマサイトに面白そうな接ぎ木小刀が出品されていました。
接ぎ木小刀というには今まで見たこともないような独自なフォルムとインパクトのある謳い文句と2つで1700円(送料込)という安さで事前検索もなく飛び付いてしまいました。
商品が届く間に検索をしてみましたところ、四郎國光という刃物店が福岡にありました。
なんでも刀匠の系統という事で現在は装飾刀剣の研ぎや包丁を製作販売しているようなんですね。
今回の接ぎ木小刀がこのお店の商品かは断定できないのですが名前から判断して十中八九間違いないと思います。
フリマサイトに生息する小刀マニアの方達もこの珍品には即座に飛びついたようで、3本組や2本組が沢山出品されていましたがあっという間に完売となりました。

さて、届いた商品を見て驚きました厚みが結構あります。




厚くニスが塗られていて水気のある接ぎ木小刀にはありがたい心遣いです。

先ずはスペックを紹介します。

仕様・複合材鍛造火造りか
価格・二本で1700円(フリマサイト)
鋼材・不明
全長・180ミリ
刃長・57ミリ
巾 ・25ミリ
厚み・3ミリ
刃角度・20度

厚みと形は切り出し小刀寄り、刃角度は接ぎ木小刀寄り、ハイブリットな小刀です。

私は接ぎ木というモノをやった事がないので考えうる接ぎ木小刀というのは厚みが2、5ミリ以下で刃角度は20度以下、ピストル型が多いと言う事くらいしかわかりませんので、参考の為に持っている昭三作の接ぎ木小刀と坂光共柄切り出し小刀を並べて比較してみました。




なかなかオリジナリティ溢れるいい感じのフォルムですよねこれは。

初期状態の研ぎなんですがかなり滅茶苦茶で、ハマグリなのか手癖なのか、意図がまったくわからないハチャメチャな研ぎです。


一見綺麗に見えますが角度を変えるとボコボコです。

日本刀は鍛冶と研ぎでそれぞれ職人がいる場合が多いですが、この研ぎは委託なのでしょうか?酷い部類に入ると思います。
で、切れないのかというとそこそこ切れるから面白い。
でも研いだらもっと切れそうなので研いでみました。


荒砥くんで研いでからナニワ響3000で研いで様子みました。

最初の研ぎが湾曲研ぎなのか、経年で湾曲しているのか(お前が下手くそなんやーというのは無しでお願いします)、とにかく鎬面が真っ直ぐになりません。




凄く固くて一回では無理と判断して刃線だけ真っ直ぐになったところで研ぐのを止めました。

上下に研ぎ残しがあり、裏は一部超糸裏になってます(かなり押した結果です)。

刃角度が鋭角のおかげもあるのでしょうが物凄く切れ味が良いと感じました。


実際硬いのかは解りませんが砥石との相性が悪く少ししか研ぎ汁が出ないんです。

軟いものを切る小刀は硬く、硬いものを切る小刀は柔らかく焼きを入れる

という西口良次さんのお話を思い出しました。


謳い文句もキッパリしていて好感が持てますね。
これが数万円したら顰めっ面になってしまいますが1000円以下という事で楽しい気分だけが残りました。
これを購入した方、同じ気分じゃないかな。