林刃物製作所・切出小刀はややこしやややこしや

林刃物製作所謹製の切り出し小刀です。
接木小刀のほうが近いかもしれません。


林刃物製作所は熊本県川尻(カワジリではなくカワシリと読む)にある包丁柄の切り出し小刀で有名な林昭三刃物工場(現在は林昭三刃物工房)の真向かいにある刃物製作所です。
同じ林姓ですからもしかしたら親戚関係なのでは?と考えてしまいがちですが一切関係ないようです。
数年前は名前が似ているせいでどちらのお店にも混同したお客さんが来るようで困っていたらしい。
何故そんな事を知っているのか?
2016年の熊本地震の時にフェイスブックで林刃物製作所さんが被害に遭われた情報を見つけてそのままフォローしていたのですが、その時は私も混同していまして、何故かというとグーグルマップのお店の写真に林昭三刃物工房のものが使われていたからなんです。
県外の人からすると林刃物が2軒あるという事が分からない状態だったのですね。
お店の方が
「間違って来店する人が増えて困っているが写真の変え方が分からない」
という書き込みがあって、私が変えましょうか?お願いしますみたいなやり取りをして写真を変更した経緯があるのでした(※現在その写真は使われていません)。


どちらの林刃物さんも九州内の物産展などの巡業販売はされているようですが通販の方は細々なようで東日本ではなかなかお目にかかれません、包丁ならまだしも小刀となるとかなり珍しいです。
※Instagramは2022年から更新されていないようですフェイスブックは2024/2が最後(記事を書いている途中2024/9に更新あり)です。
creemaで舟行包丁が通販されていました。5000円は安い!買おうかな。

仕様・自家鍛接鍛造
価格・5000円(オークション)
鋼材・不明
全長・217ミリ
刃長(刃渡り)・80ミリ
巾 ・28ミリ
厚み・1.6-4.2ミリ
刃角度・13度
重量・112g

錬鉄仕様ですが実際に折り込んで鍛接を繰り返したものなのか出来上がり母材を使っているのかは不明です。



銘ですが林昭三刃物工房さんは
山に「は」


林刃物工場は
山に「林」です


色々調べていると
山に「林」のさらに下に「和」と打たれた販売店の銘らしきものもありさらに混乱します。


ひらがな銘は林昭三と覚えておけば間違いないとは思うのですが、ネット上には箱と中身が違うのか、はたまた昔は林ではなく林昭三刃物工房と同じように平仮名の「は」を使用していた時期もある可能性もあり、とてもややこしいので今後収集を続けてデータを増やしていきたいと考えています。

裏の様子

ひっそりと見える鍛接線



今回の小刀に刻印された銘は見当たらないのですがもしかしたらシールの下にあるのかもしれませんけど触った感触では無さそうです。
そうなるとシールを剥がすと林刃物という証明ができないのでこのままにしておきます。


刃先は二段刃と言えるほどの幅があります。


熊本県の他の鍛冶屋さんの小刀や和式ナイフに多いのですが薄い作りで切刃が鋭利なものが多く刃先が二段刃になっていて部分的に鈍角にして欠けにくくしているという特徴がありまして、
盛高刃物さんや簑毛マルイチさんなんかを見ますと
包丁製作から派生した小刀故に自然な流れでそうなったと言えるのではないでしょうか?
刃角度が鋭角なので接木小刀との区別が難しいところですがあまりにも情報が少ないので今回は持ち手のぶ厚さを考慮して切出し小刀ということにしましたがいつか熊本に行って確かめたいです。

研ぎ方もベタ研ぎではなく包丁寄りになります。
2000年前後はホームページを持たれている熊本の鍛冶屋さんが今より沢山あったように思います。
研ぎのコーナーコンテンツには決まって10円玉2〜3枚の隙間を浮かせて刃先を研ぐなんて書いてありましたね。
私もそれを参考にして「10円玉2〜3枚って曖昧だなぁ」と文句を言いつつがむしゃらに研いでいました。

切れ味ですがそのままでも良く切れます。
三木の職人が作る小刀とはコンセプトが違うというか、なんだかちょっと何時もの小刀とは違った雰囲気があってこれはこれで良いものですね。
通販して欲しいし、コラボ商品など作ってみたい、そんな気にさせる小刀でした。