出張に行くと必ず個人経営の金物屋を見つけては立ち寄ります。
個人経営だからといって昔の売れ残りで掘り出し物が必ずあるわけではありませんが結構な確率で売れ残りの安価な天然砥石や古い小刀に出会えます。
山口県の某金物屋さん、店内はところ狭しと土佐鉈や包丁が並んでいます。
陳列棚に目をやると何本か横手小刀がありました。
三木章…うーん。
その隣に見たことのない横手小刀がありました。
「これ、見せてもらえますか?」
お爺さん店主が
「ハイハイ。これは良く切れるって評判だよ!」
明らかに営業トークと思ってしまった。
見た感じは鎚目で刃線が真っ直ぐ。。。利器材だろうなあ。
銘は「親和」「別製」と打たれている。
鞘は三木の製品に良くあるプラ鍔が付いていて縦楕円の握りだ。
二千円と安かった事もあったし、立ち寄ったら一個は買い物をするのが礼儀だと考えている私の口からは
「これください」
と自然に出てきてしまった。
「サービスだよ」
軍手とゴム手をもらいました。素敵なサービスです。
帰宅して試し切りしてみると驚くほど切れる。
切れ味が軽い!
工房に置いておくと自然と手が伸びている。
硬い木を切ると刃欠けがするものの軟材には絶対的な切れ味だ。
杉などは食い込みも程よく薄削りもシュルシュルと長いクズが出てくれる。
今回計測してなるほどナと納得
仕様
価格2000円くらい
鋼材不明
巾22ミリ
厚み3ミリ
刃角度18度
個人的採点78点
コストパフォーマンス81点
刃角度18度か!
これは切れ味鋭い訳だ!でも硬い木は無理かな?
最初は軟材でも刃欠けが酷くて小刃無しでは使えなかったが研ぐうちに改善が見られた。
裏スキは当初糸裏だったが平面を出したらこのようになった。
こういう裏は鉋の裏だとひょうたん裏と言ってちょっと恥ずべき事らしい。
裏出しをしっかりしないとなるから。
小刀の場合はあまり(玄能で叩き出す)裏出しは行わないので致し方ないと思ってます。
刃角度が鋭角で硬い木を切っても欠けない夢のような小刀に一番近い小刀かもしれない。
でも、厚みが薄いと硬い木を切った時保持している親指に食い込んで痛いという短所があるのだよな。
当初は小刃(刃先をコンマ数ミリ鈍角にして刃先を強靭に保つこと)を付けていたが徐々に欠けにくくなったので小刃を消していって最近は軟材ばかり切っている。
とても研ぎやすくお気に入りの一本だ。
今回は8000番相当の天然砥石で研いだあと10000のフィルムで磨いて撮影してみた。
金物屋巡りは止められない。
後にも先にも親和小刀を見たのはこの一回だけ。
もしも見つけたなら是非とも連れて帰ってみてください。切れます。
※追記。この後オークションで親和銘の小刀を発見・落札しその切れ味が本物である事を実感しました。
※2021/09/04追記
この小刀は三木親和金物共同組合の卸製品と推測できます。
つまり、池内刃物、おけや、などの製作であると予測できます。
まぁ、切れますよねそりゃあ