坂光・繰り小刀(磨き)

坂光銘でお馴染みの故・坂井久二氏の手による繰り小刀です。
晩年作という事で白紙1号を使用しています。
実はこの小刀には坂光銘がありません。
問屋銘が打ってあるだけです。
が、坂井さんの遺作となった小刀です。
美しい磨きです。
坂光小刀は黒打ちがポピュラーですから磨きは珍しいと思います。
先端部に鍛接不良が見えます。
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この程度なら問題なく使えます。

裏は凹んでいる部分があります。
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無駄に研ぎ減りしたくないので止めておいてます。
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鍛接線であるカイサキが見えます。
「大納言」の銘があります。
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仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・6000円くらい
鋼材・白紙1号
巾・22.5ミリ(根元)
厚み・3.2ミリ
刃角度・30度
個人的採点92点
コストパフォーマンス90点
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絶対に裏切らない坂光小刀。
30度という刃角度からは考えられない切れ味。
同じ坂光銘の青紙繰り小刀も持っていますがちょっと切れ味に違いがあります。
白紙のほうがコリコリ、青紙がヌルヌルと切れる感じです。
感覚の問題なんでしょうけど。

私の感覚では坂光銘の小刀はどちらかというと硬めで長切れ傾向にあると思います。
ネットで検索すると

砥石ノリがよく刃が付きやすい

的な、甘切れ傾向であるかのような文章を見かけます。

私の腕が下手なのか、それとも時代によって焼戻し工程に変更があったのか、私が持っている坂光小刀は砥いでも中々刃が付かない強靭な鋼なのです。

この白紙の小刀においてはデリケートに番手を上げて(例としてシャプトン1000→2000→5000→天然砥石で仕上げ)最後は天然砥石で優しく研いであげないと直ぐにヘソを曲げて切れなくなってしまうじゃじゃ馬と言っても過言ではありません。

よって、入門者には難しい小刀と言えるかもしれません。
私的にはそれなりの覚悟を決めて対峙するべき小刀なのです。

現在、坂光小刀を作っている増田切り出し工場の小刀との比較を早急に実現せねば!と思っています。

研ぎが決まった時の感動的な切れ味。
その感覚が忘れられなくてまた今夜も砥石とにらめっこなのです。