中古の坂光繰小刀を綺麗にしたある休日

錆びて格安の小刀を買って再生しようと思っているのですが忙しさにかまけて後回しにしているうちに何本も溜まってしまっています。
赤錆を放置すると穿孔して致命的になる事はわかっているのですが記録を残しておきたいとなるとどうしても後回しになってしまいます。

今回は坂光繰小刀の錆取りと研ぎをやりました。



先ずは柄から刃を抜きます。


錆を落としていきます。
ダイヤキラリンやサンドペーパー、荒砥を駆使して赤錆を落としていきます。






今回は割と簡単に落ちてくれました。
裏は金剛砂を振りかけてから木で擦って細かな傷を付けて磨いていきます。




歪みをチェックして歪んでいたらコジ棒で直していきます。
私はあまり叩かないです。
金属の性質上叩くと硬くなって靭性が落ちる可能性があるから。
歪みを直さずに研ぎで矯正する方が簡単ですが繰小刀の場合は特に瓢箪裏になりやすいです。
当サイトでは瓢箪裏でも切れると何度も言っていますので問題はないのですが唯一問題があるとすれば削って歪みをまっすぐにした事によって鋼の厚みが均一では無くなってしまって強度やその後研ぎ減った時に不都合が生じる可能性がある事でしょうか。
コジ棒は端材を使って簡単に作れますので是非お試し下さい。
最初は苦戦しますが慣れるとこれ程頼もしいアイテムは他にありません。

各所を計測、刃角度は必ず測っておきます

研ぎます

あらとくん
ベスター#700
キングハイパー#1000
キングハイパー#2000
キングハイパー#2000
キングS1#6000
キングG1#8000


最近はキング砥石ばかり。
SHAPTONやなにわ砥石から足が遠退いてしまっています。
否定ではなくて自分に合っているかどうかだけの問題で、キングがとても合っていて使い易いのです。




正味30分くらいで研ぎ上がりました。
動画(下に貼ってあります)を良く見ていただくと分かるのですが金剛砂を使って綺麗にした裏に半月状の傷が沢山付いています。せっかく綺麗にしたのにどこで付いたのでしょう?実は最近まで原因が分からずにいたのですが、どうやら左手指先に付着した砥石泥が原因のようで、どうすることもできないので最終でもう一度裏磨きをする事にします。

黒染めします。
先にやった方がいい場合もあると思うのですが意図しない部分が黒くなった時に砥石を当てて綺麗にしたいので今回は後からにしました。
染めたくない部分をマスキングしてガンブルー液に漬け込みます。



本来の黒打ちは油で焼入れした時に酸化鉄が皮膜を作って黒くなるのですがガンブルー液はマンガンなどの成分で第四化鉄を発生させて黒く染める(皮膜を作る)らしい。
表面に油分があると上手く染まりません。

焼入れ時にできる皮膜よりも黒黒とした皮膜ができました。

今回は黒染め後にラッカーを塗りました。
多めに研ぐと鞘が緩くなりますのでラッカーを塗ることによって少し厚くなって気持ち程度緩くなった鞘が改善できますし、黒染めの下から湧き出るように出てくる赤錆を防止する事ができるので私は積極的に塗っています。


鞘も汚れていましたのでサンディングします。
中古品は手汚れが酷いものが多いです。長年の油汚れが染み付いていますのでちょっとやそっと削っただけでは真っ白にはなりませんから一皮二皮剥いた(サンディングした)ところで妥協しないと大きく形が変わりますので注意が必要です。



サンディングしたあとはサンディングシーラーを塗ります。




サンディングシーラーは本来目止め剤なので多孔質の木材の小さな穴を埋めて均一にしてから上塗りをするための下地作りに使われるものなので塗布するとザラザラとした感触になるのですが、これがグリップ感を生み出して良い感触になるので気に入って使っています。

柄に戻します。


切れ味は最高!


椿油を塗って完成です。
安定の坂光、これでいつでも作業に使えます。