出雲繰小刀130ミリ・俺の幻の繰小刀 ついに入手

その小刀との出会いは2018年だった。
錆びだらけの横手小刀は3本で2千円という安さであったが裏に見える鍛接線が存在感を醸し出していた。


手元にきた出雲小刀は錆を御破算にするほどの美しい外観と切れ味を備えていて、そのポテンシャルは私の手元を震えさせるのに十分であった。



この小刀は誰が作ったのか?
調べていくうちに本職用という刻印の右上の欠け具合から水月という銘の小刀も同じ製作者である事がわかった。


さらに網を張り巡らせていると、かつて三木に出雲小刀という製作所が存在していた事が判明して三木小刀組合に所属していた事もわかった。

1980年以前という事もあり絶対量が少なく比較対象が無い中で繰小刀の存在も確認できたがオークションで初めて見た出雲繰小刀は劣化が酷く使える小刀を集めている私は断念したのだった。

それから数年してやっとデットストックの出雲繰小刀を入手できた。

仕様・自家鍛接鍛造火造り
鋼材・不明
全長・250ミリ
刃長(刃渡り)・125ミリ
巾・20ミリ
厚み・3.1-3.8ミリ
刃角度・36度-40度
重量・72g

出雲と言えば鋭角な刃先で繊細な削りができる小刀と思い込んでいたが、この繰小刀はなかなかに堅牢な作りである。
剣先にいくにつれてテーパーがかけられていて必然刃角度の差も大きくなっている。
※普段は平均値の角度を載せています
尖端が鋭角、根元側が鈍角になっている。
にしても、36度以上とはかなりの鈍角だが切れ味はどうであろうか?


そのままではまるで切れない状態だった。
中古だと思うのだが前の持ち主が尖端付近だけ研いで使っていたようで根元側は刃さえ付いていない「刃は自分で付けてください」という完全本職仕様になっている。

裏は機械研ぎの跡が残っているので表側だけ研いで使っていたのか、使用後の欠けも生々しい。

研いでいこう

ダイヤ→荒武者→KING300で研いでみるといくら研いでも根元から4センチくらいまで刃が付かない。
砥石を均等に当てると割り箸で指し示した場所から上だけが研ぎ減っていき鎌のような曲線になってしまう。


これを焼戻ししていない場所と判断して刃付けをしない選択をした。
そもそも繰小刀は刃先から1/3をメインに使うので根元側は刃が付かないほど固くして指が切れるのを防いだり曲がりに強くしているのかもしれない。

2000年代に作られた繰小刀ではこのような事は珍しいが2000年以前の古い繰小刀では根元に刃がない仕様は良くある事なのです。

もしかすると欄間製作に使用されていた時代から家具製作にも使われるようになってニーズに応える形て変化したのかもしれない。

ベスター700とKINGハイパー#1000




#2000と番手をあげていく。


今回は初研ぎだったのでKING#6000を最終仕上げとしました。


裏は刃先だけ平面が出たところで止めました。
繰小刀の場合直ぐに瓢箪になってしまいますので削りに問題がなければ刃先だけ平面で大丈夫なのです。
使いながら補正していく事になるでしょう。
以前は「まともに研げないんじゃないの?」という批判が怖くてしっかり押していたのですが結局使うのは自分なのですから対話するべきは世間ではなく目の前の小刀という事に気づいたという事です。



スルスルと良く切れるように仕上がりました。
36度という刃角度でも細かい作業に対応できそうです。


俺の幻繰小刀…気に入りました。