藤原小刀製作所「おけや」銘の繰小刀です。
藤原小刀製作所は三木市小刀組合唯一の組合員(2024/10/20現在は不明)で様々な小刀や包丁を製作している藤原保彦さんが代表をされています。
※注:小刀組合の存在はインスタで知り合った方から聞いた話なので実在するのか不明なのです。三木工業協同組合小刀部は存在するようですが、そちらには8名が在籍しているようなので別の組合なのか?間違っていたらすいません、即座に書き直す準備はあります
1927年(昭和2年)に手打小刀の製造を始め、家業だった桶作りにちなみ、現在も「おけや」を屋号に使い、小刀の他に小出刃・万能・かま型などの包丁も手掛けています。
竹中工務店著「切出小刀・大工道具鍛冶が込めた想い」より
藤原小刀さんは普及活動にも余念がなくプロセスX等で製作風景が観れます。かなり協力的で他にも色々な動画があります。
私は「おけや」の小刀を持っていなかったのですが1年くらい前にある小刀をオークションで落札した時にオマケとして付いてきた錆だらけの繰小刀があります、その時の説明写真では錆が酷くて判別不能だったのですが、届いて錆を落として見ると「おけや」と銘がありまして無事初対面となりました。
そちらを紹介するべく動画を撮りながら進めているのですがあまりにも損傷が酷くてモチベーションが保てず放置してしまっていて、そちらはいずれ紹介します。
木工ボンドで錆除去中のおけや繰小刀
今回は、ある繰小刀が「おけや」の槌目に良く似ていたので比較の為に未使用品を購入しました。
始めに三木鍛冶屋村の通販で購入しようと思いましてサイトを覗きまさたところ驚きました。
利器材の繰小刀に22000円の値が付いています。
さすがに間違いではないかな?と我が目を疑ったのですが、自家鍛接鍛造火造りの品は6万円前後の値が付いており正しいのか一桁間違っているのか訳が分からなくなり退散しました。
問い合わせて「正しい値段です」
と言われたらリアクションに困るので問い合わせはせず、フリマサイトで購入してしまいました。
22000円出したら自家鍛接鍛造のオーダー品が買えてしまうのであえての利器材は買えませんでした。
幅広でどっしりとした面構え
スペックはどうか?
仕様・利器材プレス打ち抜き焼入れ
価格・4200円
鋼材・青紙2号(インタビュー記事で複合材は青紙2号使用とありました)
全長・253ミリ
刃長(刃渡り)・140ミリ
巾 ・23ミリ
厚み・1.9-3.3ミリ
刃角度・28度
重量・83g
細部が丁寧です
複合材プレス打ち抜きだったらどれも同じだろ?と思うなかれ、仮に全て同じ複合材で同じ燃料で焼入れしたとしても作り手によって全く違うモノになるのが鍛冶の不思議なのです。
複合材でも凄く切れる刃物を作る鍛冶屋さんは確かに存在します。
何年も出会えなかった究極の一本が灯台下暗し複合材(利器材)だから使えねぇと机の奥に仕舞い込んでいた利器モノだったという事もあるかもしれません。
さて、おけやの切れ味はどうかな?
新品状態では小刃ガッチリですがけっこう切れます
研ぐとどうなるのか?楽しみですね、研ぎましょう!
小刀好きが忌み嫌う瓢箪裏にならないように歪みを直してから
研いでいきます。
瓢箪のクビレ部分は砥石に先に当たる部分なので仰け反っている場合とエビ反り状態で強く押して砥石に当てた場合に起こります。
瓢箪になった時に平面が出ていれば切れ味に問題はありませんしそのまま研ぎ進めると瓢箪が消えていきますが忌み嫌われるのは何故なのでしょうか?
鉋の場合は瓢箪裏になったということが反っている事の証であり裏金と密着しないという理由で嫌われている(それを見落とした事が恥である)ようですが小刀は全く関係ないと思っています。
もし問題があるとしたら鋼の厚みが部分的に違ってしまうことですが大した問題ではありません。
・一番上が新品状態のおけや
・真ん中が上手く研ぎ減った繰小刀
・下は歪みを研ぎで補正して瓢箪になった繰小刀
小刃を消しながらベタに研いでいくのですが砥当たりが躓く感じで少し研ぎにくいです
砥汁で地金が削られているのが関係しているのか研いでいるとガリッと感触があり地金に傷が付きます。槌目が関係しているのだろうか?砥石側の問題では無いようです。
研ぐ前と後で切れ味測定をやってみますと向上はあり、かなり切れるようになりました。
データが少ないので70前後の数値が良いのか悪いのかはまだ分からないのですが参考までに。
初めてのおけや切れ味はいかに#藤原小刀製作所 #おけや #繰小刀 pic.twitter.com/XMGsYR79RH
— kurikogatana (@kurikogatana) October 26, 2024
おけやの槌目に似ていた繰小刀は別モノという判断になりましたが初おけやを体験できて良かったです。