田斎作共柄切出小刀風雪・21ミリ・鑿鍛冶作の小刀がシブカッコイイ

以前から欲しかった鑿鍛冶の田斎さんが作った共柄切出小刀を曼陀羅屋さんで購入しました。
風雪という銘が入っています。


風雪の上に鋼違いの少し高価なシリーズもあるようで、黄紙と青紙というような違いなのか青紙Bと青紙Aのような違い(※ご存知の方も多いと思いますが一口に青紙と言ってもランクがあります)なのかは明示が無いのでなんとも言えませんが、私はそういう事はあまり気にしない人間なので純粋に切れるかどうかだけを感じ取りたいと思います。
一見すると観賞用なのかな?とも思える外観ですが、しっかり巻いてある鋼や持ち手なんかを見ますと実戦小刀で間違いないです。




以下曼陀羅屋さんのショップページでの紹介文

鑿鍛冶の田斎さんの共柄の切り出しです。厚みがある共柄の持ち手ですので、薄いものより持ちやすく加工作業がしやすい切り出しだと思います。鋼部分先端は強度を増すため巻き上げてあります。

鑿鍛冶の製作する小刀最大の特徴は鋼の巻部分にあります。
この部分ですね。


叩き鑿などではこの巻の部分が重要になってくると思うのですが小刀の場合は関係あるのかな?


あるとするならどういう使い方を想定した時なのだろうか?

鋼部分先端は強度を増すため巻き上げてあります

とありますが、ノミの場合は研ぎ減っても巻いた鋼部分が出てきますのでこのように作っていると思われます。


※鑿の製作工程を色々調べてもハッキリ分かりませんでしたので、おそらくこうだろうという体で書いています。間違えていたらすいません
叩き鑿で木に穴を座繰る時には鋼部分が接していないと軟鉄が接することになり変形してしまうという訳です。
小刀の場合ですが先端部分だけ巻いているのか、最後まで巻いているのか、恥ずかしながらこのような小刀を研ぎ減らしたことがないので答えがわかりません。ネットでも見たことがありません。興味があるところですので今後も調査していきますので分かり次第報告します。

小刀鍛冶の作る小刀ではこういう作り方はあまり見かけませんが、鋼巻を施していない小刀で強度に不安を感じたことはありません。
製作方法の違いもあるかと思います。
小刀鍛冶は(当然全員ではありませんが)一度に二本の小刀を作るので下図のように軟鉄に鋼を鍛接します。


※ちなみにややこしくして申し訳無いのですが上の写真は右勝手の小刀を製作しているように見えますが、実は左勝手の小刀の作り方です。二丁作りの小刀で右勝手を作る場合は下図の様に叩き直して刃替えという作業をするそうです。なぜそういう事をするのか?沢山の人に聞いた訳では無いので不正確かもしれませんが鍛接不良が減って丈夫な刃先になるそうです


巻くようなことはせず平面同士の異素材を鍛接するのはイモ付けといってもよく、後に剥離しないように鍛接するのはとても難しいのです。
小刀鍛冶の故坂井久二さんが製作した坂光小刀を見ても鋼を巻いてるようなことはありません。
※左が田斎作小刀、右が坂光小刀


双方共に雰囲気がありますね。坂光小刀負けてないぞ!
田斎作小刀は黒打ち仕上げが漆黒に近くてとても渋いです。

仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・12800円
鋼材・不明
全長・220ミリ
刃長・60ミリ
巾 ・21ミリ
厚み・3.8ミリ(先)4.2ミリ(持ち手部分)
刃角度・28度

持ち手部分は坂光よりも持ちやすそう。
緩やかな曲線が美しい。
※純粋に切れるかどうかだけを感じ取りたいと思います←冒頭で書いてたのに
裏ですが刃先部分は幅が広く後ろは糸のように細いです。


凹んだ部分は綺麗にセン掛けされています。
鍛接部分。

これは辛抱できない、切ってみよう。

切れます。

最初から良く研がれていてとても良く切れます。

特筆するべきは使いやすさですね。
何年も使っていたかのように手にフィットします。
鑿鍛冶の作る小刀では冨田修さんや碓井金三郎さんが有名ですが(その他たくさんあります)、どちらかというと鑑賞に向いたものが多い印象だったので今回田斎さんの小刀を手にして新しい小刀の世界を知ることができて良かったです。
現在曼陀羅屋さんでは入荷次第即座に売れてしまいます。その事が良性能の証明になるかと思います。