小刀界の謎が一つ解明された?!坂光小刀の刻印について

以前から坂光小刀の裏の「登録」「坂光」という銘以外の刻印がなんと読むのか分からないという声が多数上がっていました。

私の意見として殆どは「登録」「大納言」だと思っていました。
大納言という登録銘は新潟三条の金物問屋の外栄金物さんが坂光小刀を作っていた坂井さんに製作を依頼して販売していた小刀に打っていた刻印なのです。


東急ハンズでも販売していたようなのでなかなかな大量生産していたんだなぁと驚きです(他の鍛冶屋さんも同銘で作っていた可能性もありますが)。

この「大納言」という文字がなかなか曲者でして、刻印が甘いと色々な文字に見えてしまうんですね。

で、色々な年代の坂光を集めているうちに登録の後の文字が判明してきました。

そもそも登録とはなんのことなのでしょうか?
はい、商標登録(登録商標)のことですね。

商標登録とは

自己の生産・販売・取扱い等であることを表すために、商品につける、その営業者独得の標識。トレード マーク。

なんの為に商標登録するのか?例えば坂光小刀は人気で売れますよね、そこで他人が坂光の銘を打って偽物を売り捌いたとしますと、坂光さんは損害を被るわけです。
そうなると商標権侵害を主張できるのです。

商標権侵害とは、他人が登録した商標やそれと類似する商標を、法律上、他人の商標権が及ぶ分野について使用する行為をいいます。商標権侵害があった場合、商標権者は、侵害者に対して、商標使用の差し止めや損害賠償を請求することができます。また、故意で他人の商標権を侵害した場合は、刑事罰も科されます。

商標登録していても偽物は出回っているのは事実です。
今の所、坂光小刀の偽物は無いと思いますが坂光小刀の裏刻印にも色々な種類があるので無闇に偽物だと思わないように覚えておいて損は無いと思います。

別製坂光という銘は増田切出工場製ですので今回は省略させていただきます。

大納言という銘にも種類があります。


他にも四角い枠の中に「大納言」と太字で入っているものも確認しています。
大納言は今も商標登録されていますので大納言という刻印だけでは確証がない限り坂光特定は早計だと思います。


この写真の大納言は外栄金物の社長さんから直接購入したものですので間違い無く坂井さんの作ったものですが、ハッキリ大納言と打ってある方(写真左)はオークションで購入したので外観からおそらく坂井さんの作ったものだろうなー。。。程度の意見しか言えません。
もしかしたら別鍛冶屋による大納言銘かもしれません。

次は同じく外栄金物の社長から購入した青紙品です。


これは大納言銘と二本同時に購入したので大納言と打ってあるんだろうな、という思い込みからモニャモニャした字体を解析していなかったのが駄目な行為でした。

その後に購入した横手小刀の刻印を見て同じだと気が付きました。



「登録六七四二四」です。六七四二号にも見えるのですが拡大した結果六七四二四と断定しました。
はて?この番号はなんでしょうか?

おそらく、商標登録の登録番号だと思うのです。
一応、商標登録検索サイトで調べてみましたが坂光は未登録でした。
10年で期限切れになって再登録が必要ですのでそのまま消滅したのでしょうか。

それを踏まえて次の刻印です。

「登録七八五六号」です。
単純に考えると古い(若い番号)ですね。
そして、我々がいつも手にしている坂光よりもスリムで刃角度も鈍角で本当に坂光さんの作なのだろうか?と疑問が生じました。
七八五六という登録番号が一度消滅してから六七四二四号で復活した坂光、どういった経緯があったのでしょう?








坂光小刀の代名詞とも言える太めで頑丈な切っ先も七八五六号の方は鋭く一般的な繰り小刀のようです。

どちらの坂光も切れ味は良く、私にとっては坂光小刀に変わりはありませんが、確実に坂井久二さんの作と言えるのは「登録六七四二四」「坂光」このニつが同時に刻印されているものだと思います。
もっとサンプル数を増やして調査する必要がありますが坂井久二さんの小刀の出品はどんどん少なくなっていますので難航しますが今後も更新はしていきたいと思います。
追記:その後坂光繰小刀を収集して刃角度のデータを取り続けたところ大体3つの刃角度に分類できる事が分かりました。
・七八五六号のハッキリした刻印(初期)
・七八五六号ボヤケた刻印(中期)
・六七四二四と大納言(後期)
各データは以下です

ハッキリ見える七八五六号の銘

仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・4000円
鋼材・白紙一号
全長・275
刃長(刃渡り)・135ミリ
巾 ・21ミリ
厚み・3.3ミリ
刃角度・36度
重量・102g

刻印がボヤケてしまっている七八五六号の銘

仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・4000円
鋼材・白紙一号
全長・275
刃長(刃渡り)・135ミリ
巾 ・21ミリ
厚み・3.3ミリ
刃角度・28-30度
重量・102g

六七四二四の銘

仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・6000円くらい
鋼材・青紙1号(問い合わせて確認)
全長・275ミリ
刃長(刃渡り)・135ミリ
巾・21.5ミリ(根元部)
厚み・3.3ミリ
刃角度・28度
重量・109g

面白い事に銘がボヤケてしまっている七八五六号は全てではありませんが角度が鋭角になっている場合が多いです。
この事から七八五六号で何千本も作って刻印がヘタってきた頃に角度の変更が行われたのではないかと推測できるのです。

※2021/08/30追記:その後商標登録について色々と調べましたが、坂光該当の67424号と7856号という登録番号には他の登録者が存在していました。坂光とは無関係の会社です。読み方が間違っているのか文字欠けで正しい番号が理解できていないのか謎のままです。坂井久二さんの名前も過去登録には存在しませんでした。登録が切れていたとしても記録は残るようなので不思議です。
可能性として
・番号を正しく判別していない
・実際には登録されていなかった
・ニセ弁理士による詐欺被害にあっていた
・七八五六号完全偽物説

結果、もう少し調べる必要がありますので追って追記します