その1・越堂繰り小刀編より続き
助延正という銘の繰り小刀です。
見た目はとても坂光小刀に似ています。
助延正について検索するも問屋銘ということ位しか分からず「スケノブマサ」なのか「スケノブタダシ」なのか「ジョエンマサ」なのか「スケノベ某」なのかも分かりません。
有力なのは「スケノブマサ」でしょうか。
助延は日本刀の流れを組んでいるようですね。
問屋銘という事で鉋や鑿(ノミ)もあるようです。
過去に同銘の鑿を持っていた事があり、とても良く切れた記憶があります。
もしこの助延正の繰り小刀が坂井久二さんの手による坂光小刀だとすると問屋さんとしてはかなりの拘りがあったのではないかと思うのは私だけでしょうか。
現在助延正の鉋やノミ等も含め新品製品は入手不可能のようで問屋さんとしては既に存在しないのかなと思います(存在していたらごめんなさい)。
商標登録を検索しても出てきません。
鑿などは今でもオークションでたまに見かけますのでなるべく落札しようと試みるのですがまぁまぁの値段になってしまい落札できていないのが現状です。
今回は気合を入れて臨んだのですがアッサリ落札できて拍子抜けでした。
スペックを見ますと※真正坂光繰り小刀のデータを※赤文字で隣に記載します
仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・2000円(オークション価格)※外栄金物定価6000円
鋼材・不明※青紙1号
全長・280ミリ※280ミリ
刃長・130ミリ※133ミリ(研ぎ減りアリ)
巾 ・21ミリ※21ミリ
厚み・3.5ミリ※3.3ミリ
刃角度・30.8度27度
裏の様子を見てみます。鍛接線はどうでしょうか?
恐ろしい程に一致していますが刃角度が誤差の範囲とは言えません。
しかしながら坂井久二氏作・最晩年の白紙繰り小刀と比較してみますと
坂光・繰り小刀(磨き)
鋼材・白紙1号
巾・22.5ミリ(根元)
厚み・3.2ミリ
刃角度・30度
厚みが僅かに違いますが刃角度がほぼ一致するではありませんか。
裏も一致しているように見え、更に剣先やその他の様子もそっくりに見えます。
刃角度は問屋さんの注文内容によっても変わると思いますので、ここまで一致するともしや助延正=坂光という事も有り得るのかなと思いました。
肝心の切れ味ですが、青紙と白紙のせいなのか?はたまた刃角度のせいか広葉樹のような中堅木を削ってみると食い込みが強くやや重いと感じました。
※写真はサペリに黒檀をサンドしたギターネック材。難材と言っていいと思いますが越堂繰り小刀は驚異の切れ味を見せてくれました。それと比較すると少し切れ味が重いと感じました。
越堂よりも強く食い込みます。
それならば針葉樹のような軟材に向いているかというとそうでもなくて、ちょっと研ぎに工夫して自分向きに育てていかないと使えないかもしれないと感じました。
やや、癖が強いのです。
そして坂光白紙で同じ材を削ってみたところ、声をあげてしまいました
「同じだ!!!!!」
感触が完全に一致したのです。
白紙のはもったいなくてほぼ研いでおらず箱出しに近かったので比較としてはリアルなものだと思います。
あくまでも個人的意見ですが助延正は坂井久二氏作じゃないのかな?
もしオークションで見かけたら積極的に落札して比較を続けたいと思いました。
坂井久二さん、一体何万本の小刀を作ったのでしょう?迷宮は深くなるばかりです。
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