兼信繰小刀・135ミリ良く切れると思ったらあの人の製作かもしれない

オークションに繰小刀が2本組で格安で出品されていましたので落札しました。
複合材(利器材)と予想しましたが
カネダイ繰小刀のように複合材でも坂光や西口小刀に匹敵する例がありますので先入観は捨てて調査します。



銘に「兼」と付くと関の刃物というイメージがあるのは私だけでしょうか?兼常とか兼次とか兼元とか、実際発送元も岐阜でしたから岐阜で作られたモノかなぁと思いました。
商標登録の検索をしてみると「関兼信」という登録がありました。
岐阜の有限会社大澤刀剣が登録していて包丁等も販売しているようです。
関係があるのかもしれません。

スペックです(2026年から値段の表記、落札額の表記は止める事にしました)

仕様・利器材(鍛造品かは不明)
鋼材・不明
全長・235ミリ
刃長(刃渡り)・135ミリ
巾 ・21ミリ
厚み・1.6-3.2ミリ
刃角度・25度
重量・94.7g

新品で機械研ぎ仕上げの状態でも良く切れる事に驚かされました。
繰小刀は刃角度が30度前後の事が多いのですが今回の兼信は刃角度25度と繰小刀にしては鋭角な事が軽やかな切れ味に貢献しているのかもしれません。
刃角度25度の繰小刀って中々珍しいのです※その事についてはこちらの記事をご覧ください

楽しくて色々と切っていたのですが、そこである事に気づきました
「ん?これって刃線がカーブしている?」
刃線が真っ直ぐではないような気がして定規を当ててみました。


これ、微妙にカーブしてます。気づきませんでした。
カーブしてる部分もとても良く切れるのですよ。
もしかして切れ味向上を目的として意図的にカーブに仕上げているのだろうか?


田主丸型接木小刀のような形もある訳ですし、いわゆる「切った時の抜け」を良くするためにカーブ切刃にしているのでしょうか?
落札したのは2本、2本ともカーブしているので1本を研いでみました。


研ぎ上げると更に良く切れるようになったのですが違和感が…
まだカーブしている?!

おかしいな?平面の砥石でしっかり研ぎ上げたのになぜか真ん中辺りが凹んで研げてしまいます。

「お前の研ぎ方が下手くそなだけだろう」
それはあるのですが、一応他の繰小刀では真っ直ぐ研ぐ技術は持っているつもりです。


刀身を柄から抜いて全体を縦研ぎしたりしてもいつの間にかカーブが生まれてしまう。

そう言えば前にも同じような事があったな…そうだ、あれは和明繰小刀だ。
並べて見ると良く似ている。
※下が和明繰小刀



刃角度こそ2度の違いがありますが槌目の具合なんかが瓜二つです。
和明繰小刀を紹介した時には気付かなかったのですが今回改めて定規を当てて見るとやっぱり真ん中辺りが緩やかにカーブしているではありませんか。
なんで?
真ん中辺りと他の部分では硬度が違うから砥石に当てると減っていく速度が違うのかな?そんな事があり得ますか?
意図して焼き入れ時に何か、泥を厚みを変えて塗るとかしているのか、たまたまなのかは現時点では分かりませんがたまたまで何本も同じ現象が起こるとも思えません。これは長く使って行けば答えが出るかと思います。

そして、兼信と和明は同じ人、つまり池内和明さんが作ったモノだと感じました。
裏の感じとか刻印とかも良く似ていますし、三木桜印の桜の鞘仕様といい、間違いないと思います。
当然どちらも良く切れます。
※写真の「和明」銘は当サイト未紹介の田主丸型接木小刀のモノです。


特注品を除いて市販品で自家鍛接鍛造の繰小刀を入手する事はほぼ不可能と言えますので仕事で繰小刀を使う方、特に家具製作家の方などはデットストックの古い繰小刀(複合材といえども)を見つけたら予備として購入しておく事をオススメします。
今後はますます入手が難しくなる事でしょう。