林昭三さんの小刀がとんでもない切れ味だった

川尻の名人包丁鍛冶林昭三さんが作った切り出し小刀を少し研いでみました。

切れ味に不満があったわけではなく、コンベックグラインド(ハマグリ刃)で研がれている刃先に興味が出て砥石を当ててみたくなったのでした。

包丁を作る鍛冶屋さんの作る小刀はハマグリ刃になっていることが多いです。
包丁を研ぐ砥石と同じ砥石で研いでいるからでしょうか。
凹んで逆アーチ型になっている砥石で研いでいるのでしょう、真っ平らに研ぐよりもハマグリ刃の方がずっと形付けしやすいのです。

しかし、逆アーチ型の砥石を持っている人はあんまりいないです。
なにせ、砥石は平面が最高というのが最近の主流なのですから。
昭和の頃は研ぎ減りして凹んだ砥石はそのまま使っている家庭が多かったので(その砥石は殆どキングの赤レンガ!)包丁はみんな自然とハマグリに研いでいたはずです。

その流行は去り、今は切り刃は平らに研いで小刃を入れている包丁が増えてますので砥石も平らが主流。
凹んだ砥石を最良の状態に保つことって平面にするよりずっとずっと難しいんですよね。

小刀に関して言えば殆どが平らな切り刃に仕上げていますので当然私も平らな砥石にこだわっているので凹んだ砥石は持っていません。

ですからこの林昭三さんの小刀を研ごうとした時にどうしたものかと悩んでしまいました。
凹んだ砥石を作ろうか?
中砥石と仕上げ砥石を削って。
いやいや、他に使えない専用砥石になってしまうではありませんか。駄目だそれは勿体ない。

そこで柔らかめの砥石ですくうように研いで見ることにしました。

真っ先に思い浮かべたのは青砥です。
運搬中に割れてしまった悲しい砥石。
こいつで軽くすくうように研いでみたところキーンという音がして手が止まってしまいました。
この鋼硬いのかな?
青砥一号と言っても焼戻し次第で如何様にもなるはずだが、果たして名人はどこに切れるポイントを置いているのか。。。

何度か往復しているとなんとも心地よい研ぎ味が出てきました。
今まで経験したことのないような心地よさです。

こ、これって。。。。

一度水分を拭き取って割り箸を削ってみたのです。

あっ!

思わず声を出してしまいました。

切れる!凄いぞ!

青砥で軽く研いだだけで異次元の切れ味。

これが名人の刃物か!

刃先の形状を把握しきれていなくて下手くそな研ぎでこの切れ味は相当なモノだ。

続いて柔らかい仕上げ砥石をかけてみました。


産地不明ながらも重宝していた大切な砥石も割れてしまいました(泣)が小刀なら十分に研げます。

これも砥当たりが良くて直ぐ刃が付きました。

仕上げに革砥をかけました。
45度くらいに立てて力を入れずに当てます。



仕上がりました。

とんでもない切れ味です。

手持ちの小刀の中でも5本指に入ります。

料理にも使えそうだし木工にも使えます。
竹もサクサク切れます。

林さんの包丁はとんでもなく使いやすくて切れるらしいですが、小刀もとんでもない業物でした。
ただただ驚いた日となりました。