中長鋸の素晴らしさ

小刀の話ではなくて申し訳ありません。
鋸を二丁購入しました。
一ヶ月待ちです。

テレビ東京系のバラエティ番組『和風総本家』という番組をご存知でしょうか?
関東圏以外では再放送でしか観れない地域が多く、しかも土曜日の14時くらいのオンエアが多いので普段はなかなか観れないのですが、たまーに観ると面白い内容の回だったりするんですよね。

その日私が観た和風総本家には長岡市で鋸を製造する東 賢一郎という方が映っていました。
クレモナの楽器職人達が絶賛してこぞって使う超薄刃鋸が紹介されていました。

長い間日の目を見ずに赤字に苦しみ廃業まで考えたそうです。

腐らずに鋸の切れ味だけを追求してきたそうで、歪の取り方、焼きなましの秘技の数々を惜しげもなくさらけ出していました。

今まで消費者である楽器職人の本音を聞いた事がなかったそうで、クレモナから届いた職人達からのビデオレターに感動されていました。
娘さんはそれまで鋸鍛冶の仕事に疑問をもっていたそうですが父親の作る鋸が世界最高峰の鋸であることを知って驚き感動していました。
当サイトではヤスリ小刀を紹介していまして、その丁寧な仕事を知っていましたので鋸も欲しかったのです。

今回購入した鋸は畦引き(あぜひき)と言いまして、楽器製作には欠かせない形の鋸です。

楽器製作のマニュアルには必ず畦引鋸が出てきます。

例えばこのように接着された木材を普通の鋸で切ろうとすると手が邪魔になって最後まで切れませんし仮に切れても素材が傷だらけになります。




畦引鋸は持ち手が長く刃の形状の効果でサクッと切ることができるのです。




普通この鋸は持ち手に近い部分も鋸刃と同じ厚みです。
これだと使う時にクネクネして使いづらいのですが中長鋸はこの部分を厚みのある鉄と溶接しているので全くぶれずに使えるのです。

私の常識では鉄と鋼を溶接すると少なからず接ぎ跡が残るものですが、この鋸には接ぎ跡が無いようにしか見えない。


それに鋸に鉄を溶接すると鋼がなまくらになってしまう恐れがあり、いや、小刀のように小さく厚みのある鋼ならば焼入れ前に鍛接すればいいのだが、鋸のように薄い素材でそれをやるのは至難の技ではないだろうか?

中長鋸のサイトには東さんが書いているブログや刃物についての丁寧な説明が書いてあるのですが、これがかなり面白くて、ついつい読み入ってしまいます。
その中にこの畦引鋸についての説明があり、やはり予想通り、このような溶接は大変難しく、なんと完成まで2年を要したそうです。

東さん、、、探究心凄いです。

替刃鋸にシェアを奪われても腐ることなく研究を続けた東さん、和風総本家の放送と同時に経営がV字回復したそうなんです。
更にバックオーダーが溜まりすぎて生産調整をしようか悩んでおられたところにドイツから大量注文が入り、あまりにも大量だったので話半分と思っていたら口座に大金が振り込まれて驚いた!生産調整入ります!というブログを少し前に見ましたのでとても入手困難になったようです。
この性能で信じられない安さですし。
儲けとかどうでもいいのでしょうか?東さん。

ですからサイトはリンクしないでおきます。
ですが、検索すると直ぐ出てくるので長期待ってもいいという方は庭の手入れの剪定鋸などを購入してみてはいかがでしょう。
替刃鋸では味わえない世界がそこにあります。


もう一本購入したのはフレット鋸ですが後日使ってみてレビューしてみたいと思っています。