美貴久(池内刃物)横手小刀105ミリ

ネットショップで偶然見つけて千円で購入してしまった池内刃物の美貴久シリーズの横手小刀です。
池内刃物は兵庫県三木市に在りますので三木市の三木と美貴を掛けているようです。
久とは、想像ですが池内刃物二代目の久德さんから取ったのではないでしょうか?しかし、美貴久の商標を取得した年に二代目はまだ中学生くらいだったようで(池内刃物HP)私の勝手な想像の域を超えていませんのであしからず。

美貴久小刀についての製法を詳細に説明しているサイトが少ないので想像となってしまいますが、上位シリーズの昭三小刀が自家鍛接鍛造火造り加工なのにたいして利器材打ち抜き冷間鍛造加工であるだろうと思われます。



鋼と地金の境目はまっすぐで揺らぎがありません。
さざれ銘砥さんのHPにはハッキリと冷間鍛造と書いてありますので(昭三シリーズは熱間鍛造と冷間鍛造の二つの温域で、と説明があります)さざれ銘砥さんは直接池内刃物さんに出向いてオーダーしたりしているようですのでこの説明は正しいのだと思います。
鋼も白紙2号と思って間違いないと思います。



当然ながら裏に鍛接跡は見えません。
特級品の刻印があります。

仕様・利器材冷間鍛造加工
価格・1000円(定価は3000円くらい)
鋼材・白紙2号と思われる
巾・24ミリ
厚み・3ミリ
刃角度・18度
個人的採点84点
コストパフォーマンス91点(今回の購入価格とした場合)



(同時購入した135ミリと比較)

刃角度が18度という事で、小刃は必須だと思っております。
私は刃角度23度以下は小刃を付けたほうが早く研げるし刃先も強くなって切れ味も落ちないと考えています。
この小刀も最初の段階でガッチリ小刃が付けてありました。

ところが、めちゃくちゃ切れ味が悪いのです。

軽く研いでみましたところ、初期のシノギや裏が全然平らではないことが判明しました。
それから小一時間を費やして研いでみましたが凹みが深すぎて一度では研ぎきれません。


(木の先で示した部分に大きな凹みがあります)

一回で研ぐのを諦めて、とりあえず刃先が真っ直ぐになったので試し切りをしてみたところ凄く良く切れるようになりましたのでまずまず満足です。
切れ味は手持ちの昭三シリーズにも負けていません。
(その後もう一度研いでみましたら凄まじい切れ味になって驚きました)
昭三シリーズの横手小刀105ミリとの比較
この鋭い切れ味は鋭角の恩恵であると思うのですが実戦で使用した場合の刃持ちは今のところ未知数です。
昭三小刀の方が刃角度が鈍角、厚みがある、という違いはありますが切れ味はほぼ一緒で値段に差があるとなると昭三シリーズは自家鍛接に要する燃料費や手間賃の上乗せということになるのでしょうか。

軟材か堅木のどちらを主に切削するのかで選ぶのも良し、見た目で選ぶのも良し、両方持つのももちろん良し。


コレクションとは無縁であろう安価な小刀ですが実際にガンガン使用するとなるとこういう小刀は重宝します。
最近池内刃物が無茶苦茶に忙しくなった要因とも言えるテレビ東京の番組「和風総本家」に出ていた外国のトーテムポール職人は美貴久の切り出し小刀を使用して切れ味に驚愕していましたしね。

安い=入門者用と考えるのもいかがなものかと思います。なぜならちゃんと研がないと使えない場合もあるからです。

入門者用に安いの買いました→切れません→やっぱり安いから?

という誤解をしている方も多くいるようで、「切れなければ切れるようになるまで研いでみる」という考えは入門者にはなかなか浮かばないと思いますので、本当の意味で「入門者用はどんな小刀がいいの?」と聞かれると答えは難しいですね。

今回、美貴久を購入して色々勉強になりました。

追記:その後しっかりと研ぎ上げました。
私は最終仕上げは水研ぎペーパーでツルツルピカピカにするのが好きなのですが、境目がわかるように研いで掲載しておきます。



根元の部分が完璧ではないのですがここは使わないのでヨシとします。
切れ味は素晴らしいです。