堂安・蒼竜切り出し小刀は見てるだけじゃ済まないニクい奴

今を去ること20年くらい前だったかな?ネットショップにとても魅力的な小刀が売られていました。
堂安さん?という鍛冶屋さんが作った仏師小刀というモノです。


明治期の水道管を真っ二つに割ってその風合いを活かした地金の小刀です。
当時それほど小刀に詳しくなかった私は見た目に圧倒されはしましたが、大きすぎると感じてその時は欲しいとは思わず年月を経てシブいと思えるようになり欲しくなりました。
が、後の祭り、既にどこのネットショップでも非売品と表示されてしまい入手困難となってしまいました。
最近になって某ネットショップで販売中の仏師小刀を発見しました。しかも、昔の値段です。
即座に注文しましたが、ショップ様から連絡があり、既に実店舗で売れてしまっていてウェブに反映されていなかったとの事。
、、、、、残念!
と・こ・ろ・が。ショップ様から素敵な提案をしていただきまして、「堂安作蒼竜」という小刀の在庫が有り仏師小刀と同じ値段で提供できるとの事、2つ返事で了承しました。
現在堂安作蒼竜小刀は一ヶ所だけ購入できるネットショップがありますが、完全に同じモノなのかは断言できませんが29800円の値段が付いていたので得した気分です。

堂安作については情報がとても少なく新潟の鍛冶屋さんという事以外はわかりませんでした。

グーグルのAIも
堂安作の小刀には、次のようなものがあります
古代仏師小刀
竹用小刀
仏師小刀
蒼竜錬鉄切出小刀
切り出し小刀「此君」

と、僅かな情報しか出ません(サッカーの堂安選手の事ばかり出てきます)。
実際これらの5種と姫竹小刀を合わせた6種類しか確認できていません。
もしかするとどなたかの鍛冶屋さんが製作した問屋銘なのかとも疑ってみたのですが、政吉さん、藤廣さん、田斎さん、高木順一さん等に似た部分はあるものの微妙に違うのです。

開封して手にすると、とても丁寧に作られている小刀だという事が直ぐにわかりました。

鋼は巻いてあり鑿鍛冶が作る小刀の雰囲気に似ています。

仕様・自家鍛接鍛造火造り錬鉄
価格・15500円
鋼材・白紙二号と思われる
全長・210ミリ
刃長(刃渡り)・58ミリ
巾 ・24.3ミリ
厚み・4.2-4.7ミリ
刃角度・28度
重量・136g

鑑賞小刀にも思われがちな外見だが白紙二号(現在入手できるネットショップの仕様紹介と同じ鋼という前提で)という職人好みの鋼と28度の実戦的な刃角度がシブい。
このような鑑賞用の雰囲気の小刀で白紙一号ならまだしも白紙二号というのは本当に珍しいと思います。
白紙ニ号とはどんな鋼かというのを検索すると日立金属が外資系に買収されて成分表の公開を止めてしまったので情報がおかしくなっていますが、SK鋼から不純物を取り除いて黄紙、更に不純物を取り除いたのが白紙ニ号です。
最近の検索では白紙ニ号にタングステンやクロムが入っているような記述が多いですがそれは間違いです。それらを添加したものは青紙ニ号になります。
白紙ニ号は一号よりも炭素量が少ないので靭性があり研ぎやすくレアメタルも含有していないので鋭利に研ぎ上げることができると言われています。
こんな良い事尽くめの鋼なのに人気が無いのですな。
青紙にするだけで売れるというのですから驚きです。

銘はどこにも見当たらない。
名前より切れ味を見てくれと言ってきているようだ




幾層にも練られた地金はまさに蒼色。杢目が天に登っていく竜のようですね。
これは実際に何度も折り重ねて鍛接をしていると思われます


これが功を奏して滑りにくいという利点も産み出している


刃先はフルスカンジに研がれている


裏は千代鶴ほど深いセン掛けはされていない。この事が27度という刃角度を実現している要因かもしれない。
縦にセン掛けの跡がある。
錆がありデットストックだった事を覗わせる


鍛接線があり鋼が少ないのがわかる


実際に使ってみると


かなり切れます、これは驚きました。
多くの鑑賞小刀にありがちな切れない小刀とは違って喰い付が素晴らしい。サクサク切れます。
少しだけ砥石に当ててみますと地を引くことなく実に研ぎ心地が良いのは錬鉄だからでしょうか?

これはシリーズを揃えたい!
そういえば、と、以前自宅から離れたホームセンターのショーケースに仏師小刀が飾ってあったのを思い出したのでした。
よし!買いに行こう!
※次回古代仏師小刀編に続く