源音丸銘の共柄切出小刀八分・調査したくて穴だらけにしてしまいました

源音丸(ミナトオトマル・ゲンオトマルどちらかは不明)銘の共柄切出小刀八分(24ミリ)です。三条の問屋さんの依頼で同じく三条の有名な小刀鍛冶屋さんの製作。






現役OEMという事で名前は伏せさせていただきますが、この方の作る小刀は何故か銘の刻印が薄いのです。


違う銘でも色々作っているようなのですがだいたいボヤケた刻印ですね。
何故だろう?何か意図があるのかな?ちょっと判りかねますが独特の細い字体でボヤケていたら、ああ、あの鍛冶屋さんかもね、と思ってしまうのでした。

仕様・利器材火造り
価格・2800円(フリマサイト価格)
鋼材・白紙(1号2号は不明おそらく2号)
全長・205ミリ
刃長・60ミリ
巾 ・24ミリ
厚み・3.5ミリ
刃角度・30度
重量・109g

良く切れます。左側の年輪部分は鬼のように硬いので力は必要ですが刃欠けもなく切れます

30度の刃角度は躓く感じがあるのではないか?と疑ってしまいましたが、けっしてそんな事はなく、とても良い切れ味で研ぎやすく2800円ならば凄くお得に感じました。
最近新品の小刀の値段が凄く値上がりしてませんか?燃料高騰、輸送費高騰、人件費高騰では仕方ないけれども長期保管品が格安で入手できるのは有り難いですね。

坂光24ミリと比較してみます。






似ているような似ていないような

さて、この源音丸ですが利器材なのか自家鍛接なのかパッと見ではわかりません。



この部分に上手く鍛接線を隠しているようにも見えますし、隠している風に装っているようにも見えますし。。。
まぁ、切れるのならどちらでもいいのですが、小刀好きとしては知っておきたいところです。
鋼がどこまで入っているかで判断しようと思いますが、おさらいとして小刀には大別して

・自家鍛接鍛造火造り
・利器材鍛造火造り
・利器材プレス加工焼き入れ機使用

とありまして、大型の焼入れ機を使わない場合は利器材を鍛造して火造り用の小さな炉で焼入れします。
実際焼入れ機を使ってるのは池内刃物さんや藤原小刀さん三木章さんのようにプレス加工包丁や彫刻刀も作っていて共用できるような場合じゃないと採算が取れないと思います。

この大型の焼入れ機についてですが昔は池内刃物さんの工場紹介の記事で見れました。
しかしプレス加工製品を嫌悪するような風潮になってからは各社こぞって火造りをアピールするようになりまして今ではどんな機器だったのかも曖昧です。
画像は藤次郎様より


吊るしタイプの焼入れ機だと根本のクリップ部分を残して水や油にジューッと入れると思われますので根元数センチは焼きが入りません。


火造りの場合でもヤットコで挟んでジューッとやりますので根元数センチは焼きが入りません。
この事を利用して鉄工ドリルで穴開けをして焼きが入っているのか入っていないのか調査しようという目論見です。
焼きが入った場所は鉄工ドリルで穴開けは難しいです。
軟鉄部分や焼入れ前の鋼には穴が開きます。
坂光小刀に穴を開けてみたとすると鍛接線を境にハッキリ分かれるでしょう。


根元数センチの場所まで鋼を伸ばして自家鍛接する事は歩留まりの観点から考えにくいので下写真で記した青い部分にドリルを当てて穴が開かなければほぼ利器材と言えるでしょう。


穴は開きませんでした。
一番下部分には穴が開きました。


黒皮と磨きの境目は当然穴が開きません
利器材火造りと確定して良いと思います。
普段は穴を開けるなど無謀な事はしませんが方法の一つとしてやってみました。全体が磨いてあれば火花テストができます。顕微鏡で観察しても分かるそうです。
※今回行った事は興味だけです。強度が落ちたりなどの可能性がありますので皆様は穴など絶対に開けないようにお願いします。