東大吉・横手小刀90ミリ

アズマダイキチと読むようです。

「東大吉小刀」と検索してみますとわかるかと思いますが、まず目に飛び込んでくるのが東大吉小刀作者である大東英一さんの写真と自筆文です。
一部引用させていただくと

それに私の研究が加わったことで切れる刃物として全国的に有名になった。そんなことで注文を受けても、三ヶ月、四ヶ月遅れることはざらで、製品が間に合わないと苦情が絶えなかった。これでは一生仕事に縛られると思い、55歳を定年とし(中略)

しかし、東大吉を使っていた方々から、他の刃物を使っても全く仕事にならんので、何とか造ってほしいとの強い要望もあり少量は造っている。年齢的なものもあり、気の向いたときに体力に合った時間だけやっているのが現状です。まだ腕は確かなものであり、切味には自信がある。ある意味では今が集大成、一番切れるものが出来ているとも言える。数が限られているので、一丁が貴重な存
在になっている。切味に困っている方は、是非お試しいただきたい。また、青一号入魂作銘を切った
ものは後世に残して頂きたいと思っている。 (大東英一氏原文)

ものすごい自信に満ち溢れた発言だ!
そして裏の銘には「名匠」と打ってある。
名匠とは優れた技術を持った職人の事だ。

自分で名匠とまで自己紹介するのですからこれは切れなかったらクレームつけてしまうくらいのレベルの話ですよ。
しかも、他に使用しているような方の記事はほとんど無く、

東大吉小刀の本当の実力を知るのに18年かかった

みたいな竹細工職人さんの記事があるくらいです。

これって本当なのか?とまずは疑ってしまうのは私だけではないでしょう。

そこで購入してみたわけです。

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鍛接跡が生々しく…はっきり言って下手である。
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仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・9500円
鋼材・青紙1号
巾・21.5ミリ
厚み・3.5ミリ
刃角度・30度
個人的採点53点
コストパフォーマンス41点

ムムム!まるで切れない!
30度という刃角度もあってかドッドッドッっと躓くような切れ味。
一緒に購入した肥後守のほうが切れるという始末…
軟材でも硬木でも全く切れない。

怒りMAXになったり落ち込んだり…精神不安定になりながらも研いでみることにした。

ところが荒砥で研いでも中砥で研いでも全く刃が出ない。
色々な砥石を使ってようやく刃が出たけれど切れない。
天然砥石で一時間くらいスコスコしてみると、ようやくそこそこ切れるようになった。
裏はガタガタで平面を出したらかなり減ってしまった。

まさか18年付き合わないと真価を見ることができないのか!
更に一時間くらいスコスコしてみるとかなり切れるようになり、特に硬木、竹などにまあまあな切れ味を発揮するようになった。

これは個体差でハズレ品なのだろうか?
30度という刃角度でこれだけ切れれば凄いのかな?
硬木専用にすれば良いかな?
様々な思いが去来する…

試しにもう一本買ってみたいのだがけっこう高いので躊躇している今日この頃なのである。

コイツとはがっぷり四つで付き合う覚悟が必要だと思う。
現在は製作していないようであるが市場にはけっこう品物がある。

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竹の割り箸を一刀両断できる力はあるが、女性に扱えるシロモノでは無いと断言しよう。