坂光の2本目を購入したら刃先がボロボロだったから研いだら凄まじい切れ味になったよって話

今回のお話は次の記事の布石にもなっています。
坂光の横手小刀があまりにも逸品でしたのでもう一本購入してしまいました。


到着した坂光はなぜか刃先が欠けていたんです。
欠けていた理由は分かりませんが硬い木を試し切りしたのではないか?と思います。
わかりにくいですが赤丸矢印部分がノコギリ状に欠けてしまった部分です(WordPressは画素数が低いので見にくくて申し訳無いです)。

そこで研いでみることにしました。

最初に「あらとくん」(成分はPAことピンクアランダム)で欠けを修整します。



荒砥は長い間シャプトンの#120を使っていまして「あらとくん」は家に置いたまま出張に出たきりでした。
何故かというと「あらとくん」は水に浸水させて使用しなくてはいけないので出張に持っていくと不便だからです。
例えば夜に使用して翌日社から急遽何処そこの県に行ってくれと言われた場合まだ濡れたままの「あらとくん」を袋に入れて持っていかなくては駄目で下手をするとカビが生えたりの心配があります。

その点シャプトンだと打ち水で直ぐに研ぎ出せますし乾くのも速いので扱いやすいのでした。
でも、シャプトンは目詰まりが激しくて扱いにくいところがあるのですよね。

私は研ぎやすさと研磨力では「あらとくん」に軍配を上げています。
とても研ぎ味が良くて平面保持もいいんです。
小刀や彫刻刀にはとても合うと思っています。安いですし。

此度の出張は同じ場所ですでに一年以上になっていまして今後も長く続きそうで今の家に殆ど定住者となっていまして浸水タイプの砥石も問題なく使える環境になりましたので少し前に「あらとくん」を招集したのでした。

※あらとくんと書くと文章が読みにくくなるので「あらとくん」と「」を付けて表記しています。

前置きが長くなってしまいましたが欠けを取っていきましょう。

「あらとくん」にピタリと付けて研いでいきます。

この時皆様はどのように砥石に当てて(走らせて)いますか?

刃物が欠けているときには刃先は下の写真のようになっていますよね?いや例えばですパターンは色々あるとは思いますが一例としてね。

その時こうやって砥石上で走らせるか

はたまたこうでしょうか?


それともこうでしょうか?


(見本の小刀は坂光ではないです)

砥石上で走らせる方向で結果は全然違うと思うんですよね

どれがが正しいのでしょうか?

私には正直わからないんです。
刃先の角度とか鋼の硬さとか鋼の種類とか焼入れの方法(水、油、サブゼロ処理等)加減とか焼戻しの方法とか(油、オーブン、直戻し等)加減とかで刃物が100本あったら100通り以上の解答があると思うのです。
決して完全正解はないのだろうけどそれぞれの刃物に正解に近い解答がある。そんな風に考えています。

そして私にとっての良い刃物は解答がいくつもある刃物です。
要はどんな研ぎ方をしても良い刃が付いてくれる刃物です。

現実にはそういう刃物は少ないです。
やはり手元に来て最初に研ぐ時から刃先(鋼)との対話は始まり、この刃先に合う砥石は?研ぎ方は?方向は?力加減は?研ぐ時間は?というような事を全神経を使って探っていきます。
そうして答えが出た時、つまり切れる刃物が完成した時にはなんとも言えない嬉しさが込み上げてくるのでした。

同じ鍛冶屋さんが作った刃物でも一本一本違いますし、砥石の性能も厳密にはバラツキがあります、そんな中で最速の答えを見つけるのは至難で経験がモノを言うのでしょうが、私はそんなに経験も無いですし研ぎを専門にしてもいないので殆どが遠回りの試行錯誤の繰り返しです。
早く研いで作業に使いたいのですが気持ちばかり焦ってそれが原因で失敗を呼び込んだりして本末転倒になる事も度々なんです。

そんな時にたくさん天然砥石なんかを持っていればもしかすると即座に最適な砥石を選び出せるのかもしれませんが私の現状メインは人造砥石(と少しの天然砥石)ですからその中でなんとかするしかないのです。
できれば研ぎ時間は最短に済ませて作業に没頭したいのです。

さて、坂光小刀はどんな研ぎ顔(ツラ)を見せてくれるのでしょうか?
坂光の鋼はやや硬めの傾向が多いようですが研ぎやす寄りのように思いますがやや癖があるように感じます。
そして当たり外れが少なく安定しています。
個人の鍛冶屋さんでこれだけ安定しているからこそ根強い人気があるんでしょうね。
人造砥石でも問題なく研げます。

実は今回の横手小刀はシャプトンのエンジ(#5000)で研いだところで急に切れなくなる現象が起きました。なぜだろう?その前のグリーン(#2000)では良く切れていたんです、でもザリザリした感じが残っていたのでエンジに上げたのですが切れが止みました。

滑っているのか?
それでもメロン(#8000)に上げたところとても切れるようになりました。
シャプトンの砥石に付属している説明書の通りと言えばそうなんですけど刃物って不思議だ。。。
因みにこの坂光は終始この方向で研がないと上手く研げませんでした。

その後革砥で丹念に擦ったら凄まじい切れ味になりました。
やはり坂光は扱い易い小刀だ。

実は池内刃物の小刀でとても苦労している最中でして路頭に迷って坂光小刀を研いで初心に戻っていたのでした。

割り箸を試し切りしてと短い動画にしてみましたが鉋と違って切れ味はイマイチ伝わらないですね。
参考程度にご覧くださいTwitterに飛びます

次回は池内刃物の小刀に決着をつけたいと思います。