少し前に購入した新生・坂光小刀ですがこの記事の最後の方で特殊な研ぎの試みをしているのか?というような仮説をたてましたが、どうやらこれは見当違いだったようです。
なぜかというと…イマイチ切れないんです。
これはもう、研ぎでカーブを作っているんではなくて、研ぎ工程は工場出荷状態にして値段を抑え、最終研ぎは購入者に委ねるという形を選択しているとしか思えなくなってきました。
そこで一度徹底的に研ぎまくってみて、どれほどの切れ味になるのかを調査することにしました。
先ずは裏の平面を出してみました。
すると裏の最初の原型が影も形も無くなりました。
かなり研ぎ減ったのが分かるかと思います。
最初は平面が全然出ていなかったのです。
布ヤスリでゴリゴリ削ったあと荒砥で表裏を完全に平面にして手持ちのシャプトン1000→2000→5000で研ぎあげてみました…がイマイチです。
刃先は綺麗に研ぎ上がっているんですが切れないんです。
8000番相当の天然砥石で研いでみると少しだけ手応えがありました。
そこで滅多に使わない巣板と呼ばれる天然砥石で時間をかけてゆっくりゆっくり研いでみました。
(何故滅多に使わないか?勿体無いとかではなくて単純にこれを使わなくても切れるようになる小刀がほとんどなのです)
名倉で砥泥を出し、ゆっくり研ぐと軟鉄部分に少し曇りが出てきて味が出てきます。
巣と言われる模様の部分が良く研げます。
かなり時間をかけてようやく切れるようになってきました。
はっきり言ってこのように研ぐのに色々な砥石が必要になったり天然砥石でなければ切れ味が出ないというのであれば万人向けの小刀にはなりにくいですね。
好みも分かれるところです。
私が池内刃物の小刀を初心者に薦めるのはどんな砥石でも切れるようになるからというのがあるんです。
切れなくなりました→数万円の天然砥石購入してね。
では、あまりにも無理があります。
切れなくなりました→ホームセンターに行こう!というのが現実的ですし、趣味も永く続くというもの。
実は初代坂光もどちらかというと堅物傾向でなかなか刃が付かないという素人泣かせでした。
研ぎ上げ難いけれど一度研ぎ上げると切れ味が継続するという感じでしょうか。
※通常堅物と言われる小刀は欠けやすいと言われていますが坂光の場合は粘りがあり欠けにくいという評価が多いです。
つまり苦労して研ぎ上げると当面は困らないかも!
ということです。
池内刃物の小刀は研ぎやすく(甘切れ)切れ味の持続もけっこう長いと思います。
※甘切れという言葉の意味合いも諸説あります。研ぎやすいけれども切れ味が落ちやすい、単純に素材の硬度が低いのが甘い(焼戻し時間が長い)など、イマイチはっきりしないのでこの場で断定はしません。
持ち主との相性や砥石の種類、研ぎの技量によっても左右される繊細な部分ですので、最終的にはやはり自分の経験を増やして確信を積み重ねていくことが大切です。
結果として揺るがない信念が生まれるはずです。
研ぎ易くて切れ味が長く継続して欠けにくい刃物が一番なのでしょうがなかなかそういう小刀には出会えません、鍛冶屋さんはそれぞれの持論で自らの思う究極の刃物を目指しているのかもしれません。
増田切り出し工場の新生坂光はもう一本購入して色々と調査してみたいと思っています。