以前から欲しいと思っていた高知県の鍛冶、土州風子(どしゅうふうし)さんこと林信哉さんが製作されている山童(やまわらし)を入手する事ができましたのでご紹介したいと思います。
日本有数の肥後守コレクターのドクターT氏(令和にサイトが閉鎖したようです)も「もし一本を選ぶとしたら山童か○○だろう(悩んでおられる)」(○○についてはサイトをご覧ください。リンクフリーかどうか不明でしたので「肥後守」と検索して1番上のサイトを覗いてみてください)とまで言わしめた渾身の異端肥後ナイフ。
実はそう言わしめたのは風子さんの師匠・湧風(ようふう)さんが製作したもので、今回入手したものは弟子である風子さんの製作した山童です。
湧風さんは2013年にお亡くなりになって修業途中だった風子さんが試行錯誤を重ねて作ったモノのようです。
風子さんのサイトの「くろがね便り」というブログを読むと苦労が読み取れて興味深いです。
私は湧風さんの作った山童は持っていないので比較する事はできませんが、永尾駒製作所の四代目と五代目の作りを比較したり、初代坂光さんと二代目坂光さんの切れ味を比較してきた事もあります、山童もいつかチャンスはくると思ってますので機会がありましたら比較して記事にしたいと思います。
それでは山童を見ていきましょう。
見よ!この凄まじい大きさのチキリを!
実はこの大きなチキリがあまり好きになれなくて購入が遅れていたのでした。
だって、ポケットに入れてたら破れそうだし、痛そうだし、肥後守のサイズ感からしたらあり得ないですよ。
ダメですよね、新しいモノを認めない、受け入れない、持ってもいないクセに嫌いと言ってしまう。
これでは駄目だ。
悪い所だけを見て良い所を見ようとしない。
あぁ、まるでありがちな人間関係と同じじゃないか。
ところが、冨田修さん製作の小刀を入手してからは急に偏見が無くなり(現金なものです)、山童がかっこ良く思えてきたのでした。
大きなチキリは安定性抜群です。
一見すると無骨な作り。
これは机の上で眺めている小刀じゃない!野原でガシガシ使う小刀だ!と思わせてくれます。
仕様・自家鍛接鍛造火造り
価格・8500円くらい
鋼材・白鋼
全長・218ミリ
刃長・90ミリ
巾 ・20ミリ
厚み・3.2ミリ
刃角度・17度
計測してみてちょっと驚きました。
考えていたより厚みが薄く、刃角度も鋭角です。
17度で堅い枯れ枝とか削れるのだろうか?
刃先は一見すると完全ベタ研ぎ(フルスカンジ)に見えますが、超マイクロベベルが入っています。
かなりの研ぎ上手だと思います。
この刃先を見るとベタ研ぎと勘違いして研ぎ直しの時にベタベタに研いで
「刃先が弱い」
と言い出す人が多いんですよね、そういうのを防止するためにも明確な小刃を入れる鍛冶さんも多いのですが、今度は躍起になって小刃を消したがる。
なぜ小刃は敬遠されるのか?小刃は安物の代名詞じゃないと思うのですが。。。
実際枯れ枝や節に使ってみないと確実な事は言えませんが、17度の刃先でフルスカンジで使える小刀には出会った事がありませんのでこの山童も小刃は必要と思います。
(紙を切るならいいけど)
割り箸を削った感じでは良い切れ味ですね。(箱出しで紙は綺麗に切れませんでしたが必要なしです)
ズッシリと重く、鋭角な刃先でもしっかりしたチキリがあるのでグラグラしないです。
物凄く丁寧な作りでデティールが作りこまれている珠玉の一本と言っても過言ではない!野原で使いたくもあり、もったいない感もあります。
革ケースか何かを作って早く一人キャンプで使いたいです。
比較の為並べました。
左から冨田修肥後ナイフ豆、肥後守大、山童