林昭三作・切り出し小刀の予備を入手してメンテナンスしたの巻

林昭三切り出し小刀の予備品が欲しくてずっと探していました。
稀に出品があっても競争が激しくて価格高騰してしまって入手できずにいたのですが最近やっと中古品を3200円で落札する事ができました。
今持っている方を予備にして中古で入手した今回の方を普段使いにする算段です。

※林昭三さんですが2023年にお亡くなりになったようです。
林刃物工房は息子さんが跡を継いだようです。

届いたモノを観察すると黒錆が酷い箇所が在り、裏は鍛接線が隙間なく接合されています。








かなり研ぎ減っていてベタ裏になっています。
私が今まで持っていた方は箱出しでハマグリ刃になっていたのですが、今回の方はどうやら前のオーナーがハマグリ刃を嫌ってスカンジ、いわゆるベタ研ぎできるように研ぎ直したと思われ、錆びた状態でも鋭く食い込む感じがしました。
これは切れるようになる予感

あらとくんをかけると黒錆が表に侵食している事が判明しました。こうなると7ミリくらい研ぎ減らすか使いながら消していくかの判断をしなくてはいけません。
普段使いなので使いながら消していく方を選択します。





ベスター#700を使いました


突如覚醒したように凄く切れるようになりました。
もう#700で完成で良いんじゃないの?


と思いつつキングハイパー#1000→#2000と進みます。とても研ぎやすいです




ここでガンブルー液を使って黒染めしました。
仕上げ前に黒染めして鎬(シノギ)に付いたガンブルー液を仕上げで消したいのです

裏がベタベタですがルーターで彫って糸裏を再構築するような事はしません。何故か?

・そのままで切れるから。
木材を削る時は裏をべったり密着させる事は少なく必ず少し間が空いているので糸裏かどうかは関係しない。



・鋼を掘ると軟鉄部分に底抜けする可能性がある。
下は小刀を研ぎ進めると起こる裏の状態の図です


今回の小刀は③の状態ですので裏を彫り進めると鋼部分を突き抜けて軟鉄部分に到達する可能性が出てきます。そうなると小刀の寿命が終わるのでベタ裏のまま使うのがベストなのです。
小刀の鋼は削らない小刀は糸裏じゃなくても切れるという事を強く言いたいです

ハイパー#2000で既にもの凄い切れ味になって驚きましたがキングS1#6000まで使ってみました。


赤く見えますが錆ではありません




柄が汚れていたのでペーパー掛けをしてクリアラッカーを塗って完成です。

黒錆部分は上手く刃が出ていないのですがその部分も何故か良く切れますし全体として素晴らしい切れ味です。
林刃物工房は松炭を使って高火力で火造りして炭素を鋼に移して最高の切れ味にする製法を用いているらしいのですが、その製法では鋼に炭素が移る事は無いという鍛冶屋さんも多いのですね。
しかし実際は凄まじい切れ味を生み出しているのですから事実と言えましょう。私は信じています。

黒染めが決まって渋い仕上がりになった林昭三切り出し小刀。
これから普段使いで宜しくお願いしますと挨拶をして終了。