肥後守を砥石にペッタリ付けて研いでも全く切れるようにならない。
なぜか?
その原因を特定するためには、ちょっと乱暴なやり方ですが平面な砥石と油性マジックを使って診断すると納得が得られると思います。
先ず刃のシノギ(鎬)部分を油性マジックでベタ塗りします。
平面の出た1000番くらいの中砥石をべたりと砥石に付けて少し研いでみます。(写真はシャプトン刃の黒幕オレンジです)
するとどうでしょう!砥石の当たっていない部分が黒く残りました。
刃先が全然砥石に当たっていないんですね。
肥後守の安価なタイプは刃角度が20度以下の場合が多く、そのままベタ研ぎにすると刃先が弱いので新品は刃先だけを鈍角にしているのです。
これを、二段刃というか小刃というかマイクロベベルというかはいろいろ意見はあると思うのですが、とにかく新品の肥後守はベタ研ぎを続けても切れるようにならないという真実があるのです。
多くの研ぎ好きがベタ研ぎ、つまりフルスカンジを良しとして刃角度が20度の肥後守を一生懸命ベタ研ぎを続けて刃先の段を消す努力をします。
ようやく刃先の段が消えて待望のフルスカンジ刃が完成して紙や産毛を切って喜んでいるのですが、木や食材を切って唖然とします。
速攻で刃がボロボロになるのです。
フルスカンジに研ぐことができる刃物というのは刃角度が25度以上だったりある程度の厚みがあるもので、その条件がないのにフルスカンジで研ぐと刃先が脆くなるのです。
はっきりいいますと安価な(3000円以下くらい)肥後守はフルスカンジには不向きです。
二段刃、小刃を付ける研ぎ方を覚えないと肥後守の真価は引き出せないでしょう。
刃先の部分を研ぐには一度砥石にべたりと置いてから少し起こして研ぎます。
これはコツが必要で難しく感じるのでフルスカンジ(ベタ研ぎ)にしたがる人が多いのかもしれません。
起こす角度が何度くらいなのか?起こして研ぐとグラつく、反対側が更に難しい。
これらのポイントの説明がとても難しくて慣れてもらうしかないのが辛いところで、包丁のように補助道具(トゲール等)もないので失敗しながら慣れて下さいとしか言えません、申し訳ない。
普通は2〜3回も研げばコツが見えてくると思います。
最初は刃先にマジックを塗って消す要領で研ぐといいと思います。
肥後守の研ぎ治具を開発しようと考えていますが、なかなかいいアイディアが浮かびません。