手持ちの小刀の中でも硬物と言うんでしょうか、研げども研げども砥石ばかり減って全然刃が出ないのが何本かあるんです。
「いくら硬くても砥石が負ける事はないだろう?減っても刃は出るはず」
なんて意見もあると思うのですが、坂光(初代)小刀等は本当に研ぎ下手な私には厄介に感じる事があるのです。
最近肥後守を研いで遊んでいたのですが、新品から一皮研いだら突然硬い層が出てきて、いや、おかしな話なのですが、小刀って芯に近くなると突然硬くなる事も、逆に脆くなる事もあるんです。
で、今回の肥後守は硬い硬い。
シャプトンのオレンジがどんどん減っていくのですから驚きました。(単に研ぎ下手なのかもしれませんね)
シャプトンが駄目なら人造砥石はほぼお手上げです。
こういう時に天然砥石を当ててみると驚きの効果をあげる事があるんです。
私は長い間、天然砥石を避けていました。
論客に辟易した過去があり(その後和解するのですけど)意識的に避けていました。
高価で当たり外れがあるイメージが強いというのもありました。
知人で砥石に凝りすぎて全財産を注いで破産した人や、愛媛の山中に砥石を採取しに行ったまま戻らなかった人がいたりして、天然砥石は怖かった、いや、今も怖いです。
それでも、譲っていただいたり必要に迫られて中砥からスタートして少しずつ買い足したりして何本かは持っています。
今回、肥後守のハードな鋼を溶かした(という形容がしっくりきます)のは超硬めの天然砥石でした。
あえて産地などは書きませんが、凄い切れ味に仕上がって驚いています。
スプルースがサクッと切れて切れ跡がピカピカに光ります。
驚きの食い込みです。
天然砥石も小刀同様、購入して暫く経過してから突然真価を発揮する場合があります。
単に使いこなせていなかったものがコツを掴んでポテンシャルを引き出せるようになったのか、それとも研ぎ減りして良い層が出てきたのか、謎です。
未だ完全に解明できていないミステリアスな部分が多いから魅了されていくのかもしれませんね。
砥石にハマっていく人を見ると吉村昭先生の小説「羆」の中の「蘭鋳」という短編小説を思い出してしまいます。
なんだかんだいってコッパから集めてしまいそうな今日この頃です。