肥後守を製造している永尾駒製作所。
4代目の永尾元祐さんから5代目の永尾光雄さんに代替わりしたことは以前にもお伝えしました。
公式ホームページでも明示してありますし、箱の付いた小刀の箱の中に入っている注意書きには5代目の名前がしっかり書いてあります。
平成12年に刃研ぎ修業を始めて
平成22年に入社、とネット情報がありました。
入社イコール5代目襲名ではないと思いますが、おそらく平成25年頃に5代目襲名となったのではないかと予想します。間違っていたらごめんなさい。
代目が変わるとどんな世界でも先代は良かったとか、何かと先代と比較されるのが宿命ですよね。
例えばラーメンやお菓子の世代交代なんかでは先代の味が恋しくてずっと文句を言ってる人もいたりします。
でも新しい味を受け入れるファンも増えたりして、苦しみながら少しずつ自信をつけていったりして。
肥後守に関してはどうでしょう?
申し訳ないのですがいきなりネガティブな発言をしなくては駄目なのです。
実は肥後守に関してはここ10年あまり評判が良くなかったと言わざるを得ないのです。
某掲示板では刃が曲がっている、刃が欠けている、鞘が緩い、研ぎ傷が凄い、刃が脆い、これらは購入直後の初期不良ではないか?という書き込みが増えていました。
肥後守は元々安くてチープな作りですから、その辺を理解できていない世代の方達の苦情にならない苦情だと思っていたのですが、5000円以上の高級肥後守においてこのような話がポンポンと出てくるのでした。
にわかには信じられませんでした。
しかし、私自身も当時ホームセンター等で購入した安価な肥後守数本が耐久性が著しく悪くて辟易した事があり、当時は後継者がいないとの情報でしたから、正直、肥後守は終わったのだ、と思ってしまいました。
その原因として真っ先に思いついたのは、やはり製作者の高齢にあるのではないか?ということでした。
視力の低下、握力の低下、判断力の低下、これは仕方のない話です。
私自身もオジサンになってきて身体が思うように動かなくなってきた時期、更に大病を患ったりしたことと重なり妙に切なくなってしまった記憶があります。
しかし、今考えてみますとちょうど5代目が入社した辺りが製品にバラツキがあった時期ではないのかな?とも思えます。
慣れない作業工程で不安定な製品を作ってしまった可能性は十分あります。
もちろん全て私の勝手な推測ですから真相はわかりませんが、現在平成31年時点ではとても安定した肥後守が市場に出ているようです。
といったところで、4代目の作った小刀と5代目の作った小刀を比較して何か違いがあるのか確認してみることにしましょう。
良い悪いという判断だけではなくどこか違う部分はあるのか?
興味深いです。
方法ですが手持ちの藤巻小刀の箱同封の説明書を信用して4代目と5代目の作りに違いはあるのか確認します。
刃型が違いますし、たったニ本ではバラツキという可能性もあるのですが、何か見えてくると思うので検証の価値はあるはず。
4代目の小刀が左側飴色の藤巻です。
5代目の小刀が右側で白くて新しい感じがします。
笹刃と角刃という違いはありますがほぼ同じくらいの部分から先にむかって角度がついています。
反対側をみると発見がありました。
(上が4代目作です)
わかりますでしょうか?5代目は真っ直ぐな線が4代目では乱れがあります。
削った割り箸の先で示している部分ですが、乱れがわかるかと思います。
わずかなのですが研ぎに影響のある部分ですから乱れがないほうが良いと思います。
この乱れは鍛造段階で発生していると思われます。
背中の部分を見るとわずかにくびれているのがわかります。
)(←こんな感じ。
たまたまの一本の可能性もあるのですが、実は4代目のこの部分は結構な確率で乱れがあるんです。
いつも同じ側なので研ぐ時のクセがあるのではないだろうか?と常々感じていました。
肥後守全体に言える事なのですが、「青紙割込」という部分の刻印を打つ時にやや反るようなんです。
だから微妙に反対側の研ぎに影響が出る。
刻印の反対側の研ぎは難しいんですが5代目は綺麗に仕上げているというのが私の考えです。
とても細かい部分なのですが黒い角の部分は5代目は面取りしています。
4代目は指に少し違和感があります。
ここは親指が触れる部分ですから面取りしてあると嬉しいです。
刃紋についても発見がありました4代目はどちら側も均等に刃紋が見えます。
5代目は片側が鋼の出方が少ない。
アップにしてみると
これは研ぎ進むと鋼が出てこない場所が出てくる可能性がありますね。
割込鍛接技術はさすが4代目といったところでしょうか。
刃紋のアップのついでなのですが5代目は機械研ぎの跡がとても綺麗で上手だなと思いました。
4代目はやや雑という印象でしたから。
4代目のは実は少し研いでいるのですが深い傷やチップが多くてなかなか綺麗に研げないのです。
お尻の部分も違いがありますがここは重要性はないと思いました。
エビの尻尾みたいですね。
切れ味ですがどちらも良く切れます。
切れ感は違います。
箱出しだと5代目のほうが切れる感じがしたのですが、4代目は滑らか、5代目は少し鋸で切っているような抵抗をわずかに感じました。
同じ砥石で研いだ時にどうなるのか楽しみです。
まだまだ比較できる部分はありますが今回はここまでにします。
5代目の小刀。。。イイですね!
なんの問題もなく使えますし切れます。
お店には4代目の在庫もあるでしょうからどちらがくるかはお楽しみ、また、どちらがきても問題無く使用できるという結論に至りました。
※当然ですが4代目の説明書が入っていたからといって必ずしも4代目が製作した証拠(5代目も同様)にはなりませんので今回の記事はあくまでも勝手な推測によるものであることをご了承ください