用途の違いにおける切り出し小刀

よく、竹用の小刀と普通の木を切る小刀の違いってなんですか?と聞かれます。
ノコギリなどは山の形や目数が違っていて明確な違いが分かります。
ナタなんかも竹割り用は両刃になっていたりします。

でもって、「竹とんぼ 切り出し小刀」「竹用切り出し小刀」などのワードで検索してみると、両刃の切り出しが出てきたりぶ厚い片刃の切り出しが出てきたりします。(これだ!という明確な答えは見当たりません)
確かに竹のような強靭な粘りと硬さを持つ対象物を切る場合には薄刃刃物だと親指が痛い事があります。
14700499747531695203221

だいたいこういうふうに持つのが常ですから、親指に当たる部分の厚みと形はとても大切です。

しかし、自称竹細工職人の方のブログなどを観てもこういう部分について書いている方は皆無なんです。

そこで自分で考えてみますと、ある程度の厚み(3.5ミリ以上)があって親指の当たる部分が指に優しい形であれば、刃角度に着目するだけで硬い木でも柔らかい木でも竹でも自在に切れるんじゃないの?なんて考えが頭に浮かびます。

ただ、竹なんかは焼戻しを長くして柔らか仕上げにして、柔らかい木は焼戻しを短くしてキンキンに硬く仕上げるのが本当なのだそうです。
(焼戻しについては検索してみてください)
ですから特注刃物をお願いすると先ずは
「何を切るための小刀?」
と鍛冶さんに聞かれる場合が多いです。
最初は刃角度を決めるためかな?と思ったのですが、以前に硬い木用と柔らかい木用とを同時注文した時にまったく同じ刃角度の小刀ができてきて焦りました。
硬い木用にはポンチが一つ打ってあって区別しろとの事、、、何が違うの?
との質問に硬さを変えているんだよ、との答え。

確かに柔らかい木用で硬い木を切ると刃が欠ける。
硬い木用で柔らかい木を切ると繊維が潰れる。

いや、しかしですね。
初めて切り出し小刀を購入した時にいきなり二本、それも特注品なんて買わないですよね。

なんとか一本であらゆる材質をいとも簡単に切断できるような小刀はないものかな?

小刀鍛冶さんの中にはこの「究極の一本」を目指して日夜製作に励んでいる方も少なくはないようです。

しかし我々ユーザーは鍛冶ではありませんので研ぎでカバーするしかないのです。

その小刀の特徴を知り性能を最大限まで引き出すとそこそこは万能小刀が出来上がる、、、、と私は信じています。

今回は23度程度の小刀に鈍角の小刃を付けて硬い木やプラスチックなどにも対応できるようにしてみました。

DSC_0051

左から、割り箸、竹、プラスチックストロー、紙です。

なぜこういう事に必死になるのかというと、木材ってヤツは同じ木の中でも部位によって硬い柔らかいがあるから、一刀両断の最中に真逆の性質が現れる事が多々あり、その場合に取り返しがつかなくなるのを回避するためなんです。
DSC_0052

DSC_0053

こんな風に節目が出てきたりした時でも気にせず切ることができます。
DSC_0055

刃先には30度以上の本当に極小の小刃を入れています。
刃先を強化できる小刃は購入当初の脆い刃先を強化する目的にも使えますし、切る対象物によって刃角度を変更する時にも使えますので覚えて損はないでしょう。
ベタ研ぎの後で鈍角になるよう浮かせて刃先を砥石に当てる。
これだけのことなのですが中々難しいです。